中国の AI 開発企業 Z.AI(旧 Zhipu)が、自国製チップだけを使ったデータセンターの建設を終え、稼働を始めたと Bloomberg が 2026 年 7 月 21 日に報じました。中国の大手テック企業が外国製チップを一切使わずにデータセンターを建てた例としては、初めての報告とされています。
施設の設計上の最大電力容量は 1GW で、一般家庭に換算すると約 75 万世帯分に相当する規模です。中国の AI 企業が手がけた施設としては最大級の部類に入ります。ただし現時点では一部のみの稼働にとどまっており、1GW はあくまで上限値であることに留意が必要です。
使用チップのメーカー名は公表されていませんが、Z.AI はこれまでの AI モデル開発に Huawei の Ascend チップと MindSpre という独自ソフトウェアを使ってきたと明らかにしています。2026 年 2 月 11 日にリリースした大規模言語モデル GLM-5 は、Huawei Ascend 910B チップを 10 万基使って開発されており、主要なオープンモデルとしては初めて完全に中国製の技術だけで作られた事例と説明されています。さらに 2026 年 6 月 16 日に公開された GLM-5.2 は誰でも自由に利用・改変できる形(MITライセンスのオープンソース)で提供されており、AI モデルの性能比較サイト Artificial Analysis のランキングで世界首位を獲得しました。
こうした動きの背景には、米国による対中輸出規制があります。Zhipu AI は「中国軍の近代化に貢献した」として米商務省のブラックリストに載せられており、高性能な Nvidia 製チップを正規ルートで調達できない状況に置かれています。今回のデータセンターは自国製チップを積極的に選んだというより、他に選択肢がない中での対応策として建設されたものです。制裁によって特定の技術へのアクセスを封じようとした結果、かえってその技術を国内で育てる動機を与えるという、皮肉な構図が生まれています。
企業としての成長も続いています。Z.AI は 2026 年 1 月 8 日に香港証券取引所に上場(銘柄コード:2513.HK)し、約 5 億 5800 万米ドル(約 837 億円)を調達しました。今回のデータセンター完成の報道を受け、株価は最大 19% 上昇しています。また、2026 年の売上目標を 7 月の時点ですでに達成しており、年間売上 10 億米ドル(約 1500 億円)の達成も視野に入ってきたとされています。
こうした動きは Z.AI に限りません。アリババも 2026 年 4 月に自社開発チップを使ったデータセンターを稼働させており、中国国内での AI インフラ整備は着実に進んでいます。「高性能な AI 開発には Nvidia のチップが不可欠」という業界の前提が崩れつつある中、米国の輸出規制がどこまで有効に機能するかという問いへの答えも、変わりはじめています。
