サンフランシスコを拠点とする AI スタートアップの Poolside は、2026年7月21日、ソフトウェア開発向けの AI モデル「Laguna S 2.1」を一般公開しました。モデルの設計図にあたるウェイトデータは無償で配布されており、企業が自社サーバー上でそのまま動かせるのが特徴です。
技術的な規模としては総パラメータ数 1,180 億という大型モデルですが、実際の処理時には全体の約 7% にあたる 80 億パラメータしか動作させない仕組みを採用しています。必要な部分だけを動かすことで、性能を落とさずに運用コストを抑えられる設計です。また一度に処理できるテキストの長さも最大 100 万トークンと非常に長く、大規模なコードベースや長文ドキュメントの分析にも対応できます。
性能面では、コーディング系のベンチマークで競合モデルを上回る結果を出しています。開発作業の自動化能力を測る DeepSWE ベンチマークでは 40.4% を記録しており、中国の AI 企業 DeepSeek の最新モデル( 9.0% )に大きな差をつけました。一方で Poolside 自身も認めているように、OpenAI や Anthropic といった大手のクローズドモデルと比べると、まだ全体的な性能は及ばない部分もあります。
開発のスピードも注目点のひとつです。同社は 2026年5月22日にトレーニングを開始し、わずか 52 日でリリースまで漕ぎ着けました。通常、大規模モデルの開発には数ヶ月から 1 年近くかかることを考えると、異例の速さといえます。この短期開発を支えているのが、データ収集からトレーニング・評価までを一元管理する自社プラットフォーム「Model Factory」で、同社はこの 3 ヶ月間で 3 つのモデルを連続してリリースしています。
このリリースには、産業政策的な背景もあります。オープンに公開されている高性能 AI モデルの分野では、ここ 1 年ほど中国系の企業が存在感を増しており、同規模クラスへ西側企業がモデルを投入するのは 11 ヶ月ぶりのことでした。共同 CEO の Jason Warner 氏は「西側には、信頼でき、自ら動かし、構築できるオープンウェイトモデルが必要だ」と述べており、金融や医療など規制の厳しい業界でデータを外部に出せない企業や政府機関への訴求を意識した発言です。
利用コストも抑えられており、 OpenRouter を通じた API 利用では入力 100 万トークンあたり $0.10 (約 15 円)、出力 $0.20 (約 30 円)という水準です。同社の企業評価額は 2025年10月時点で約 120 億ドル(約 1 兆 8,000 億円)に達しており、 NVIDIA から最大 10 億ドル(約 1,500 億円)の追加出資も受けています。
