2026年 FIFA ワールドカップが 6月11日(現地時間)に開幕しました。メキシコシティのエスタディオ・アステカで行われたメキシコ対南アフリカの開幕戦を皮切りに、米国・カナダ・メキシコの 16 都市で計 104 試合が繰り広げられます。史上初めて 48 チームが出場するこの大会の決勝戦は、 7月19日にニューヨーク・ニュージャージーで開催される予定です。
今大会が過去の大会と大きく異なるのは、 AI 技術が競技の根幹にまで組み込まれている点です。 Lenovo と FIFA は協力して、サッカー専用の AI アシスタント「 Football AI Pro 」を開発し、全 48 チームに無償で提供しています。 2,000 以上のサッカー専用データで学習したこのツールが目指すのは、いわば「情報面での公平な競争環境」の実現です。潤沢な予算で多くのアナリストを抱えられる強豪国だけが高度な分析を享受できる、という従来の構図を変えようとしています。
オフサイド判定にも変化が生まれています。参加選手は全員、試合前に約 1 秒間のボディスキャンを受け、精密な 3D モデルが作成されます。このデータが半自動オフサイドシステムに組み込まれることで、選手同士が重なり合う込み入った場面でも体の位置を正確に判定できるようになりました。さらに判定が明らかなケースでは、映像を確認する VAR ルームを経由せず、主審のデバイスに直接アラートが届く仕組みも採用されており、判定までの時間が短縮されています。
公式試合球「 Trionda (トリオンダ)」も見どころのひとつです。アディダスが開発したこのボールには慣性計測センサーが内蔵されており、毎秒 500 回という高頻度でボールの動きを計測し、データをリアルタイムで審判サポートシステムへ送信します。スタジアムに設置された約 12 台の高速カメラとあわせて活用することで、選手の動きをかつてない精度で把握できる環境が整いました。
ファンの観戦体験においては、 Google が Gemini AI を中心に据えたサービスを展開しています。スマートフォンのロック画面でのライブスコア表示をはじめ、アルゼンチン代表やフランス代表など複数の国の代表チームとスポンサー契約を結び、コーチングスタッフの戦術分析にも Gemini が活用されています。
セキュリティ面では、顔認識システムやカメラ搭載のロボット犬が会場に配備され、米国連邦政府機関は監視技術に 3億6,500万 ドル(約548億円)を投じています。ただし ACLU やアムネスティ・インターナショナルを含む 120 以上の市民団体が、人種プロファイリングや顔認識技術の運用に懸念を示している点も事実として押さえておく必要があります。
Deloitte の試算によれば、今大会はメキシコ経済に約 27億3,000万 ドル(約4,095億円)の経済効果をもたらすと見込まれています。かつてカラーテレビ中継や GPS トラッキングがワールドカップを機に普及したように、今大会が AI 活用の社会的な転換点として記憶されるかもしれません。
