テスラは 2026 年 4 月、ロボタクシー専用車両「 Cybercab 」の量産を本格的に始めました。初号機は同年 2 月 17 日にテキサス州のギガファクトリーで完成しています。 CEO イーロン・マスク氏はその様子を X (旧 Twitter )に投稿し、量産移行は 2026 年第 1 四半期の決算説明会でも正式に確認されました。
Cybercab の最大の特徴は、ハンドルもペダルも持たない完全自律走行を前提とした設計です。 2 人乗りの電気自動車で、充電はワイヤレス方式を採用しています。タクシーとして 24 時間休まず稼働させることを念頭に置いた仕様であり、マスク氏は本体価格を 3 万ドル(約 450 万円)以下、走行コストを 1 マイルあたり約 0.20 ドル(約 30 円)に抑えることを目指すと説明しています。
生産規模については、現在ギガテキサスの製造ラインを週数百台体制へ整備しており、すでに敷地内で 60 台以上が確認されています。将来的な年間生産目標は複数工場フル稼働時で 200 万台とされています。ただし今年中は段階的に台数を引き上げる計画であり、急速な拡大は見込みにくい状況です。
規制対応も注目点のひとつです。米国では、ハンドルやペダルを持たない車両は既存の安全基準を満たさないため、通常であれば政府に特例申請を行う必要があります。ただしその場合、生産できるのは年間 2,500 台までに制限されており、大量生産とは程遠い水準に留まります。テスラはこの制約を回避するため、 Cybercab をハンドル・ペダルのない設計のまま米国の連邦自動車安全基準( FMVSS )の全項目に独自適合させるという手法を選びました。基準への適合を自社で確認・保証する「自己認証プロセス」は、トヨタやフォードなど既存の自動車メーカーが一般的に用いている方法です。これにより、テスラは特例申請なしに Cybercab を量産できる法的な根拠を確保しました。
収益モデルについては、車両の販売収益に頼らない構造を目指しています。具体的には、個人や法人が Cybercab をテスラの自律走行ネットワークに登録することで稼働させて収益を得る仕組みを想定しており、テスラはそのネットワーク利用に応じた手数料(レベニューシェア)を継続的に得るビジネスモデルを描いています。車を売って終わりではなく、走り続けるほど収益が積み上がる設計であり、スマートフォンのアプリストアに近い発想といえます。アナリストの試算では、 Cybercab 関連の売上は 2026 年の 10 億ドル(約 1,500 億円)から 2030 年には 750 億ドル(約 11.25 兆円)へ拡大するとみられています。ただしマスク氏自身は、実質的に収益が出始めるのは 2027 年以降になるとの見通しを示しています。
一方で課題も少なくありません。現在テスラがオースティンなどで試験運行しているロボタクシーは、万一の際に介入できるよう社員がリモートで走行を監視する「監視あり」の運用形態をとっています。それでも事故の発生頻度は約 5.7 万マイルに 1 件とされており、人間のドライバーの約 22.9 万マイルに 1 件と比べると約 4 倍高い水準です。 Cybercab が目指す「監視なし」の完全無人運行では安全基準のハードルがさらに上がるため、この数字は克服すべき重要な課題として業界から注視されています。また 2 月以降、開発を担う幹部 3 名が相次いで退職しており、プログラム運営への影響を懸念する声もあります。完全自律走行の実現と規制当局の承認については、引き続き不確実性が残っている状態です。
