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中国 Moonshot AI、Kimi K2.6 を正式公開:コーディング性能でフロンティアモデルと競合

中国 Moonshot AI、Kimi K2.6 を正式公開:コーディング性能でフロンティアモデルと競合
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北京に拠点を置く Moonshot AI は 2026 年 4 月 21 日、最新 AI モデル「 Kimi K2.6 」の一般提供を開始しました。同モデルは 2026 年 4 月 13 日にベータ版として先行展開されており、 8 日後に正式版として Web サービスやアプリ、開発者向け API などで広く利用できるようになっています。

モデルの構造としては、処理に必要な部分だけを動的に選択して動かす「 Mixture-of-Experts(MoE) 」と呼ばれる設計を採用しています。全体のパラメータ数は 1 兆と非常に大規模ですが、実際の処理に使われるのは一度に 320 億パラメータに絞られるため、効率的な運用が可能です。一度に扱えるテキストの長さも従来に比べて大幅に拡張(256K)されており、大規模なコードベースをまとめて読み込んだうえで処理できます*。モデルの設計データはオープンソースとして公開されています。

性能面では、実際の開発現場で起きるような問題を解かせる評価テスト「 SWE-Bench Pro 」で 58.6 点を記録し、 OpenAI の GPT-5.4 ( 57.7 点)や Anthropic の Claude Opus 4.6 ( 53.4 点)を上回りました。幅広い知識と推論力を総合的に測る「 HLE-Full with Tools 」でも全モデル中トップのスコアを獲得しています。ただし、純粋な数学的推論のテストでは GPT-5.4 がわずかに優位な結果となっており、得意・不得意の差は残っています。

複数の AI エージェントが連携して作業を分担する「スウォーム機能」も強化されました。最大 300 の子エージェントが同時に動き、合計 4,000 ステップにわたる処理を実行できます。公式ブログでは、この機能を使った具体的な成果として、自社で行なった「プログラミングコードの最適化作業」を例に挙げています。 Kimi K2.6 が 12 時間にわたって自律的にコードの改善を繰り返した結果、同じコードが 1 秒間に処理できるテキスト量が 15 トークンから 193 トークンへと約 13 倍に向上しました。これは通常であれば熟練したエンジニアが数日〜数週間かけて取り組むような最適化作業を、 AI が半日で自動的にやり遂げたことを意味します。

費用面での競争力も注目に値します。 K2.6 を API 経由で利用する場合、API の利用料金は GPT-5.4 と比べて 4 〜 17 倍ほど安く設定されています。通常の開発者が K2.6 を使って 1 日コーディング作業を行なった場合に費やすコストの目安は $8 〜 12 (約 1,200 〜 1,800 円)程度になると試算されています。 Anthropic の Claude Code で同等の作業を行う場合の目安が $80 〜 120 (約 12,000 〜 18,000 円)とされているのと比べると、そのコスト差は明確です。

商用製品への組み込みについては、月間利用者 1 億人以上または月次売上 2,000 万ドル(約 30 億円)を超える規模になった場合、画面上に「 Kimi K2.6 」のクレジット表示が必要になります。すでに複数のサードパーティ開発者ツールが初日からこのモデルを標準採用しており、中国発のオープンソース AI が大手テクノロジー企業のプロプライエタリモデルと肩を並べる状況が着実に広がっています。

*OpenAI、Google、Anthropicなどの商用AIモデルが軒並み1Mを超えているのと比べると見劣りはしますが、オープンソースモデルとしてはトップクラスのコンテキストウィンドウとなります。