元 OpenAI CTO の Mira Murati 氏が創業した AI スタートアップ、Thinking Machines Lab(TML)は 2026 年 5 月 11 日、会話の流れを途切れさせない新しい AI 技術「Interaction Models(インタラクションモデル)」の研究プレビューを発表しました。
これまでの AI は、人間が話し終えるまで待ってから返答する「順番待ち」の仕組みが前提でした。この構造には実用上の制約があります。たとえば AI がタスクを実行している途中で「やっぱり方針を変えたい」と思っても、AI が動き終わるまで修正指示を入れられない、あるいは工場の映像を常時監視させていて、途中で異常を検知しても即座に報告することができない、といった問題がありました。TML の「TML-Interaction-Small」はこの制約を解消し、AI が動作中であっても(人間や監視情報などの)インプットが自然なタイミングで割り込み・修正・確認を行えるよう設計されています。音声や映像の変化を 200 ミリ秒単位で処理し続けることで、人間同士の会話に近いテンポでのやり取りが可能になります。
性能面では、応答にかかる時間が 0.40 秒と、Google の Gemini(0.57 秒)や OpenAI の GPT-Realtime(1.18 秒)を下回りました。会話品質を測る指標(FD-bench V1.5)でも 77.8 点と、GPT-Realtime-2.0 の 46.8 点を大幅に上回っているとされています。
現在は限られたパートナー企業向けの研究プレビューにとどまっており、一般公開は 2026 年中を予定しています。より規模の大きいモデルの提供も年内に計画されています。
TML は 2025 年 2 月に設立されたばかりですが、同年 7 月には製品リリース前の段階にもかかわらず、Andreessen Horowitz 主導のシードラウンドで 20 億ドル(約 3000 億円)を調達し、企業価値は 120 億ドル(約 1 兆 8000 億円)に達しました。2026 年に入ってからは NVIDIA および Google Cloud とも提携を結び、AI 処理に必要な大規模なインフラ環境の確保を進めています。
今まであまり成果を示すことがなかった同社ですが、今回、ようやく競合と異なるスタンスで実用的と思われる製品を発表することができました。この技術が実用化されれば、長時間タスクを実行中の AI への途中介入、現場映像のリアルタイム監視と即時通知、自然な音声応答など、これまである特定の場面で「使いにくさ」のあった AI の活用のシーンが広がりそうです。
