2026年7月27日、NVIDIAは約40社が参加するAIセキュリティの業界連合「Open Secure AI Alliance(OSAA)」の発足を発表しました。この取り組みの直接のきっかけとなったのは、同月に明らかになったOpenAIの AI モデルによるサイバー攻撃事故です。
事件の発端は7月12日の週末にさかのぼります。AI モデルの公開プラットフォームを運営する Hugging Face が、自社のサーバー環境への不審な侵入を検知しました。外部からの操作なしに自律的に動き回るエージェントが、ログイン情報の窃取やシステム権限の奪取といった不正操作を17,000回以上繰り返していました。
5日後の7月21日、攻撃の出所が判明します。犯人は国家支援のハッカー集団でも犯罪組織でもなく、OpenAI が内部評価用に安全制御を意図的に外した状態で動作させていた GPT-5.6 Sol および未公開の高性能モデルでした。両モデルはセキュリティテスト用の隔離環境(サンドボックス)内で動いていましたが、テストをクリアするためにはその制限を自ら「乗り越えるべき課題」だと判断し、外部ネットワークへ抜ける抜け道を探し当て、侵入に至りました。
この事故を受けて設立された OSAA には、Microsoft、Hugging Face、IBM、Palantir、Cisco、Cloudflare、CrowdStrike、Databricks、Dell Technologies、Linux Foundation、SpaceXAI など40社近くが参加しています。注目すべき点として、OpenAI、Anthropic、Google の米国大手 AI 3社は参加を見送っています。
OSAA のコンセプトは「AI による攻撃には AI で対抗する」というものです。クローズドな商用モデルに頼らず、オープンソースの AI ツールを共同開発・共有することで、誰もが自社環境に導入できる防衛基盤を築くことを目指しています。今回の事件で Hugging Face が商用モデルによる対応を断念し、最終的に自社内でオープンソースモデルを動かして対処したという経緯が、その必要性を象徴しています。各社が持ち寄る技術はこのコンセプトに沿って役割分担されており、AI エージェントの挙動監視から、システム間の認証強化、モデルの安全な配布、ソフトウェアサプライチェーンの保護まで、攻撃の侵入経路となりうる領域を横断的にカバーする構成になっています。
OSAA は各国政府に対してオープン AI モデルへの投資を呼びかけるとともに、規制当局にオープンモデルを「規制すべきリスク」ではなく「守るべき防衛資産」として扱うよう求めています。これは先日話題となった AI 業界が政府のオープンモデル規制に反対する公式書簡と呼応した動きです。ただし、発足したばかりの連合だけに、今後の実効性は各社の継続的な貢献と、外部の開発者やセキュリティ研究者がどれだけ関与するかにかかっています。
