トランプ政権の米司法省(DOJ)は 2026 年 9 月 2 日、ニューヨーク・タイムズ(NYT)が OpenAI と Microsoft を訴えている著作権訴訟に関して、マンハッタン連邦裁判所に意見書を提出しました。AI の学習データをめぐる著作権争いに、米政府が初めて公式のスタンスを示した形です。
事の発端は 2023 年末、NYT が ChatGPT の開発に自社の記事が無断で大量使用されたとして訴訟を起こしたことです。対象は数百万件にのぼり、求める損害賠償額も数十億ドル規模にのぼります。現在は複数の関連訴訟をまとめた形で、Sidney Stein 判事のもと審理が続いています。
今回の意見書で DOJ が訴えたのは、端的に言えば「AI の学習は著作権侵害ではなく、それを規制することは米国の国益を損なう」という主張です。具体的には三点を挙げています。まず、AI モデルの学習は著作物をまったく別の目的に活用する「高度に変容的」な行為であり、フェアユース(公正利用)にあたること。次に、フェアユースの解釈を厳しくすれば、科学技術の発展や国家安全保障にも悪影響が出ること。そして、厳格なライセンス取得を義務付けると、費用を負担できる大企業だけが有利になり、競争環境がかえって歪むこと、です。
NYT 側はこうした主張に強く反発しており、「無断使用を認めれば、人間が作るコンテンツの持続可能性が失われる」と政府の介入を批判しています。
一方、同じ時期に注目すべき関連事例もあります。 2026 年 7 月 20 日、AI 企業 Anthropic が 15 億ドル(約 2,250 億円)の和解に応じ、北カリフォルニア連邦裁判所で承認されました。米国史上最大の著作権集団訴訟の和解です。この案件では、AI 学習そのものはフェアユースの範囲内と認められた一方、学習に使った書籍を違法な海賊版ライブラリから入手していた点が問題視されました。つまり「何を学習させるか」ではなく「どこから素材を調達したか」が争点となったわけで、正規のルートでデータを取得していれば免責された可能性が高いとも言えます。
DOJ の意見書は裁判所の判断を左右する力を持ちますが、法的拘束力はなく、最終的な結論は Stein 判事が下します。アナリストの間では和解額を 20 億〜 50 億ドル(約 3,000 億〜 7,500 億円)と見る向きもありますが、いずれも憶測の域を出ません。AI 学習と著作権に関して上訴裁判所が明確な基準を示した前例はまだなく、この訴訟の行方が今後の業界ルールを大きく左右することになりそうです。
