2026 年 7 月 24 日(現地時間)、Microsoft 、NVIDIA 、Meta 、IBM 、Hugging Face といった米国の AI 関連企業・団体が、「 Open Weights and American AI Leadership 」と題した共同の公開書簡を発表しました。中国を過剰に意識し、オープンウェイトのモデルに急いで規制をかけることは、米国にとってかえって不利になる、というのが書簡の趣旨です。
オープンウェイトとは、モデルの中身(学習済みのパラメータ)が公開されていて、誰でもダウンロードして性能を検証したり、手を加えたり、自社のサーバー上で動かしたりできるモデルを指します。API 経由でしか使えないクローズドなモデルとは、この点が大きく違います。
署名した企業、しなかった企業
署名は当初 25 社・団体ほどでしたが、その後 OpenAI なども名を連ね、報道の時点では 35 社前後まで増えました。上記のほか、Mistral 、Perplexity 、Palantir 、Dell 、Andreessen Horowitz 、Y Combinator 、The Linux Foundation などが並びます。
Google は書簡そのものには署名せず、後から支持を表明する形を取りました。Anthropic は署名していません。NVIDIA の Jensen Huang CEO は書簡の公開に合わせて X のアカウントを開設して支持を表明し、Microsoft の Satya Nadella CEO 、Meta の Mark Zuckerberg 氏、OpenAI の Sam Altman 氏も肯定的な反応を示しています。
書簡が出てきた背景
きっかけの一つは中国勢の動きです。ここ最近、Moonshot AI の Kimi K3 や Z.ai のモデルなど、米国勢に迫る性能のオープンウェイトモデルが相次いで公開されています。これを受けて米政権内では、中国製オープンモデルの利用を制限する案や、「蒸留」(性能の高いモデルの出力を教材にして別のモデルを鍛える手法)による知的財産の持ち出しを規制する案が浮上していました。
ただ、この種の規制は中国製モデルだけを狙って効かせることが難しく、米国企業が公開するモデルやそれを使う研究者にも影響します。そのため、業界側が先回りして懸念を示した、という構図です。なお書簡自体も中国を名指ししていません。
書簡の主な主張
書簡は、米国の AI における立ち位置を決めるのは「最も性能の高いモデルを誰が作るか」ではなく「その技術がどこまで広く行き渡るか」だとしています。1980 年代以降のオープンソースソフトウェアを引き合いに、新興企業や大学がゼロからモデルを学習させずに済むこと、クラウドやチップ、アプリケーションのそれぞれの層で競争が生まれること、特定のベンダーに囲い込まれずにデータやモデルを自分たちで管理できることをオープンモデルの利点に挙げました。
安全性については、いったん公開したモデルは開発元の制御を離れ、改変版を追いきれないというリスクを認めたうえで、それでも「禁止は答えではない」という立場です。AI がサイバー攻撃に使われる時代には、守る側も同じ水準のモデルを使える必要があること、多くの研究者が中身を検証できるオープンな形の方が問題を早く見つけられること、クローズドなモデルだけに頼れば外部からは気づけない不具合が生まれやすくなること、といった点を挙げています。
蒸留についても、正当な改善・評価の手法と違法な窃取は分けて考えるべきで、後者には対象を絞った法的・商業的な枠組みで対応すればよいとしています。あわせて政策側に対しては、規制ではなく、スタートアップや研究者が使える計算資源の拡大、データセットや評価基盤といった共有の土台への投資も求めました。
今後の見方
今回の書簡は、クローズドなモデルで先端性能を追う企業群と、オープンなエコシステムに軸足を置く企業群の温度差をはっきり示す出来事となりました。もっとも、これは「安全性か開放か」という単純な対立ではなく、どこまで公開を許し、どこから規制をかけるかという線引きの議論です。
日本の企業にとっても、自社の環境で動かせるモデルを選べるかどうかは、コストやデータの扱い方に直結します。米国の政策がどこに着地するかは、当面注視しておきたいところです。
