上海を拠点とする AI 企業 MiniMax は 2026 年 6 月 1 日、新しい AI モデル「 M3 」をオープンウェイトモデルとして正式に公開しました。プログラムの自動生成・修正を行うコーディング機能、最大 100 万トークンという長大な文脈処理能力、そして画像・動画・画面操作に対応するマルチモーダル機能を一つのモデルに統合しています。同社は 2026 年 1 月 9 日に香港証券取引所へ上場しており、 M3 は上場後初の主要製品となります。
ソフトウェア開発タスクの難易度を測る業界標準のベンチマーク「 SWE-Bench Pro 」では 59.0% を記録し、 OpenAI の GPT-5.5 ( 58.6% )や Google の Gemini 3.1 Pro ( 54.2% )を上回りました。ウェブ検索・情報収集タスクを評価する「 BrowseComp 」では 83.5 を記録し、 Anthropic の Claude Opus 4.7 ( 79.3 )を超えています。ただし Anthropic の最新モデル Claude Opus 4.8 は SWE-Bench Pro で 69.2% を達成しており、総合的にはその水準には届いていません。
処理速度の大幅な改善を支えるのが、「 MiniMax Sparse Attention 」と呼ばれる独自技術です。従来の AI モデルは処理する文章が長くなるほどコンピューターの計算負荷が急激に増大する構造的な課題を抱えていました。同技術では必要な部分のみを選んで処理することでこの問題を解決し、長文処理にかかる計算コストを従来比で 20 分の 1 に抑えることに成功しています。応答速度も大幅に向上しており、出力速度は毎秒約 100 トークンとされています。
コスト面での競争力も際立っています。 API 利用料金は入力が 100 万トークンあたり $0.60 (約 90 円)、出力が $2.40 (約 360 円)と設定されており、 OpenAI の GPT-5.5 や Anthropic の Claude Opus と比べて 15 分の 1 から 25 分の 1 程度の水準です。モデルの設計データや技術資料についても、リリースから 10 日以内に一般公開する予定とされています。
導入を検討する際には注意点もあります。公表されているベンチマーク数値は MiniMax 自社の環境で測定されたものであり、第三者による独立した検証はまだ実施されていません。また、中国の国家情報法( 2017 年制定)により、 API を経由して送信されたデータはユーザーの所在地を問わず中国の法的管轄に置かれる可能性が指摘されており、機密性の高い情報を扱う企業は特に慎重な判断が求められます(ただし、Google Cloud経由などの場合はこの限りではありません)。
DeepSeek や Qwen に続いて中国発のモデルが欧米大手との価格差をさらに広げる形となっており、 AI 業界全体のコスト競争に影響を与えそうです。
