OpenAI は 2026 年 6 月 4 日、ChatGPT の記憶機能を大幅に刷新した「Dreaming V3」を発表しました。まずアメリカの有料プラン(Plus・Pro)のユーザーから提供が始まり、無料ユーザーを含む全世界への展開は数週間以内に予定されています。
ChatGPT の記憶機能はこの 2 年ほどで大きく変わってきました。2024 年 4 月の登場時は、ユーザーが「これを覚えておいて」と明示的に伝えた情報だけを保存する仕組みでした。2025 年 4 月には会話履歴を自動で整理する機能が加わり、今回の V3 ではさらに踏み込んで、ユーザーが何も指示しなくても過去の会話から情報を自動でまとめ、時間の経過に合わせて内容を更新し続ける独立したシステムへと進化しています。
「Dreaming(夢を見る)」という名前は、人間が眠っている間に脳が一日の出来事を整理して記憶に定着させるプロセスになぞらえたものです。蓄積された記憶は会話の履歴とは別に管理され、新しい会話を始めると自動的に読み込まれる仕組みになっています。
OpenAI の社内評価では、過去の情報を正確に思い出せる割合が 2024 年の 41.5% から V3 では 82.8% に向上しました。時間の流れへの対応も大幅に改善されており、たとえば「7 月にシンガポールへ行く予定」という記憶が旅行後には「2026 年 7 月にシンガポールへ行った」へと自動的に書き換えられます。
今回、無料ユーザーへの提供拡大を実現させた背景には、処理コストを約 5 分の 1 に抑える技術的な改善があります。有料プランのユーザーはその分の余力を使い、最大 2 倍の記憶容量を利用できるようになります。
記憶の内容は設定画面から確認・編集・削除が可能ですが、プライバシー面での注意点もあります。セキュリティ企業 Tenable Research は 2025 年 11 月、記憶の仕組みを悪用して外部から不正な情報を埋め込む攻撃のリスクを指摘しており、OpenAI は V3 でこの問題に対処しているかどうかを明らかにしていません。
競合他社では、Anthropic がすでに全プランで同様の記憶機能を提供し、他社の AI からの記憶データの取り込みにも対応しています。今回のアップデートは AI モデルそのものの大きな転換というよりは、使い続けるほど自分に合った応答が返ってくる「育てる AI」としての側面を強化する、実用的なアップデートといえるでしょう。
