トランプ政権は 2026 年 9 月 29 日、行政手続きや給付制度をまとめて調べられる AI チャットボット「America.gov」を公開しました。トランプ大統領自らワシントン D.C. で発表し、同日に大統領令へ署名しています。
サービスは GSA(一般調達局)が運営し、開発を担ったのはホワイトハウス直轄の国家デザインスタジオです。同スタジオは 2025 年にトランプ大統領が新設した組織で、テクノロジーやデザインの知見を持つ民間人材を政府に招き入れ、行政サービスの使い勝手を抜本的に改善することを目的としています。スタジオ長には Airbnb 共同創業者のジョー・ゲッビア氏が就いており、 America.gov はそのシリコンバレー式アプローチの集大成と位置づけられています。
技術面では、約 2 万 9,000 の政府ウェブサイトを参照し、 Google の Gemini とイーロン・マスク氏の Grok を AI エンジンに採用しています。アカウント登録は不要で会話履歴も残らず、無料・広告なしで使えます。市民が給付制度や行政手続きを気軽に確認できる入口として設計されておりますが、法的アドバイスの提供は明示的に除外されています。
現時点の機能は質問への回答と関連ページへの案内にとどまりますが、パスポート更新やメディケア申請をサイト上で完結できる機能が 2026 年内に追加される予定です。今回署名された大統領令では、複数の連邦サービスに一つのアカウントでログインできる政府共通認証基盤「 Login.gov 」との連携も義務付けており、今後は複数の政府サイトを行き来せずにワンストップで手続きが済む将来像を描いています。
ただし、船出は順調とは言い切れません。公開初日、 AP 通信は「チャットボットが 2020 年大統領選の結果についてトランプ氏の主張と矛盾する回答を示し、その後に修正された」と報じました。 AI が誤った情報を自信満々に答えるハルシネーションのリスクも残っており、フードスタンプや税務など生活に直結する場面での誤回答が招く実害を懸念する声も出ています。元 FBI 防諜アナリストのフィリップ・フィールズ氏は「機密性の高い情報の入力や、今後追加される給付申請機能の利用は避けるべきだ」と警告しています。
また、構築コストや AI エンジンの選定根拠といった基本情報が公開されておらず、透明性を問う批判もあります。情報を調べるだけのツールと、給付記録や申請データを扱うツールとでは、リスクの質がまったく異なります。機能拡張が進む中で、どこまで説明責任を果たせるかが、このサービスへの信頼を左右する鍵になりそうです。
