OpenAI は 2026 年 8 月 28 日、AI コーディングツール Cursor を展開する SpaceX に対し、AI モデルの提供契約を終了すると正式に通知しました。提供終了日は 2026 年 11 月 12 日です。
そもそもの発端は、SpaceX による Cursor の買収です。Cursor を開発した Anysphere は 2026 年 8 月 14 日、SpaceX による約 600 億ドル(約 9 兆円)の株式交換での買収が完了したことを発表しました。SpaceX はすでに Elon Musk 氏率いる AI 企業 xAI を傘下に持っており、Cursor の買収はその延長線上にある動きです。
OpenAI が契約終了に踏み切った背景には、Musk 氏との深刻な法的対立があります。OpenAI は、Musk 氏が宣誓のうえで xAI が OpenAI のモデルを使って自社 AI「Grok」を開発していたことを認めたと指摘しています。この証言は 2026 年 4 月 30 日にカリフォルニア州オークランドで行われた裁判の審理で出たものです。また Twitter(現在は SpaceX の傘下)も過去に契約条項に違反したとされています。OpenAI は「Musk 氏が関与する企業が利用規約を守るという確信が持てない」と説明しており、契約に含まれていた所有権変更条項を行使する形で今回の決定を下しました。Musk 氏はこれに対し「無関心」とだけ述べ、OpenAI 経営陣への不信感を示しています。
実際のユーザーへの影響は限定的とみられています。Cursor 共同創業者の Michael Truell 氏は 2026 年 8 月 29 日、OpenAI モデルが Cursor 全体のトラフィックに占める割合は約 5% にすぎないと明かしました。2026 年 11 月 12 日以降は OpenAI の既存モデルも利用できなくなりますが、Claude・Gemini・Grok といった他社モデルは引き続き使用可能です。自前の OpenAI API キーを持つユーザーは、それを使えば GPT モデルへのアクセスを継続できます。
OpenAI モデルを業務で使っている開発者や企業には、代替手段への切り替えに向けて約 10 週間の猶予が与えられています。アナリスト企業 Avasant の Abhishek Satapathy 氏は「評価の時間としては足りなくはないが、実際の移行作業は簡単ではない」と述べており、OpenAI のモデルを使用した既存のワークフローを他のモデルで検証し直す手間は相応にかかりそうです。
今回の動きは、OpenAI の共同創業者でもあった Musk 氏と同社との長年にわたる確執が、ビジネスの現場にまで波及した象徴的な出来事といえます。Musk 氏は OpenAI の営利化路線を批判して訴訟を起こしましたが裁判では敗訴し、現在も控訴中です。その一方で xAI を立ち上げ、SpaceX を通じて Cursor まで手中に収めた Musk 氏に対し、OpenAI が取りうる対抗手段として今回の契約終了を選んだという見方は自然です。個人間の対立が AI 業界の商流を動かす——そうした構図が改めて浮き彫りになっています。
