OpenAI は 2026 年 10 月 6 日、社内の未公開 AI モデルが生成した数学論文 722 本を GitHub 上で公開しました。数論や代数幾何など 17 分野にわたる広範な内容で、数学の世界に大きな話題をもたらしています。
CEO の Sam Altman が特に注目する成果は 4 つあります。長年の未解決問題として知られる「リーマン予想」への前進、ゲーム理論と計算複雑性に関わる「Unique Games 予想の証明」、代数幾何学の重要課題「Hodge 予想の部分的解決」、そして純粋数学の難問「自由群因子の同型問題の解決」です。ただしいずれも完全な解決ではなく、特定の条件下での成果となっています。
ビジネス面で注目したいのが、AI による行列計算の効率化です。コーネル大学の Steven Strogatz 教授は「行列乗算の計算効率に関する従来の世界記録を大幅に更新した。これは陸上競技で例えれば、世界記録を一気に塗り替えるようなインパクトだ」と述べています。行列計算は AI や機械学習の根幹を支える技術であり、この改善は将来の AI 開発コストの削減につながる可能性があります。
ただし、今回の公開には課題もあります。 722 本の論文は通常の学術雑誌が行う査読を経ておらず、OpenAI 自身も「一部の結果には誤りが含まれる可能性がある」と認めています。 722 本のうち機械的に検証済みなのは 162 本にとどまります。
こうした動きの背景には、学術界との摩擦があります。 2026 年 9 月 11 日、世界最高峰の数学賞である Fields 賞の受賞者 25 名が「AI が数学研究の厳密さを損なっている」と警告する公開書簡を発表。その後 7,800 名以上が賛同しました。 OpenAI はこれを受け、プリンストン高等研究所(IAS)と連携し、著名数学者 9 名で構成される独立諮問グループ(AGMAI)を設立しました。ただしこのグループの役割はあくまで助言にとどまり、OpenAI の研究スピードを落としたり、方向性を変えたりする権限は明示的に与えられていません。学術界への配慮を示す姿勢は見せつつも、研究の主導権は OpenAI が握ったままという構図です。
AI による数学研究は Google DeepMind なども取り組んでいますが、これほど大規模な論文の一括公開は前例がありません。専門家の間では「成果の検証にはまだ時間がかかる」との見方が大勢を占めており、今回の公開はゴールではなく出発点と位置づけられています。
