OpenAI は、年次経常収益( ARR )が 100 億ドル(約 1 兆 4,500 億円)に達したと発表しました。これは 2024 年末の約 55 億ドル(約 8,000 億円)からほぼ倍増した数字で、ChatGPT の急速な普及と企業向けサービスの拡大が主な成長要因となっています。
この驚異的な成長の背景には、ChatGPT の爆発的な普及があります。2022 年のリリース以降、ChatGPT は 2025 年春時点で週あたり 5 億人以上のアクティブユーザーを獲得し、300 万社以上の有料ビジネスクライアントを抱えるまでに成長しました。個人向けのサブスクリプションサービスに加え、企業向けの AI サービスや API の収益も急増しており、これらが収益成長を強力に牽引しています。
OpenAI はさらに野心的な目標を掲げており、米 The Informationによると 2029 年までに年商 1,250 億ドル(約 18 兆円)の達成を目指しています。この計画の中核となるのが AI エージェント事業で、自律的にタスクを実行する AI エージェントが 2029 年には 290 億ドル(約 4.2 兆円)規模の市場になると予測しています。
収益構造の詳細を見ると、ChatGPT のサブスクリプション収益は 2025 年の 80 億ドル(約 1.2 兆円)から 2029 年には 500 億ドル(約 7.3 兆円)へ、API 収益も 20 億ドル(約 2900 億円)から 220 億ドル(約 32 兆円)へと大幅な成長が見込まれています。また、新たな収益モデルとして、無料ユーザーからの取引手数料やアフィリエイト収益なども検討されており、2029 年には 250 億ドル(約 3.6 兆円)の規模に達する可能性があります。
一方で、急成長の裏には大きなコストも伴っています。OpenAI は 2024 年に約 50 億ドル(約 7300 億円)の赤字を計上しており、今後数年間でさらに大規模な投資が必要とされています。特に AI システムの運用コストや研究開発費、人材確保などに巨額の資金が必要で、2029 年までに 460 億ドル(約 67 兆円)規模の投資が見込まれています。
ただし、AI システムの運用効率化が進むことで、コスト構造の改善が期待されています。現在約 40% の粗利益率が、2029 年には約 70% まで改善し、キャッシュフローも黒字化する見通しです。この改善により、OpenAI は持続可能な成長軌道に乗ることができると予測されています。
資金調達面では、2025 年 3 月に 400 億ドル(約 5.8 兆円)の大型資金調達を完了し、企業価値は約 3000 億ドル(約 44 兆円)に到達しました。これにより、当面の資金需要は賄えるものの、長期的な成長投資のためには追加的な資金調達が必要になる可能性もあります。
OpenAI は 2030 年までに月間ユーザー数 30 億人を目指しており、AI プラットフォームとしての地位をさらに強化する構えです。この規模が実現すれば、Google や Meta 、NVIDIA といったテック大手と肩を並べる存在となり、AI 業界の主導的地位を確立することになるでしょう。
わずか 3 年弱で年次収益を 100 億ドルまで伸ばした OpenAI の成長は、AI 技術の商用化がいかに急速に進んでいるかを示しています。今後も技術革新と市場拡大を両輪として、AI 業界のリーダーとしての地位をさらに強固なものにしていく見通しです。