AI倫理と規制 半導体・データセンター 政府・行政のAI取り組み

ニューヨーク州、大規模データセンターの建設を最長1年間停止

ニューヨーク州、大規模データセンターの建設を最長1年間停止
文字サイズ

ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事は 2026 年 7 月 14 日、消費電力が 50 メガワットを超える大規模データセンターの新規建設を最長 1 年間禁じる行政命令に署名しました。州レベルでの全面停止は全米初の措置です。

規制の対象となるハイパースケールデータセンターは、 AI の急速な普及を支える計算処理の基盤として各地で建設が相次いでいる施設です。その規模は大きく、稼働には一般家庭約 5 万世帯分に相当する電力と、冷却のための大量の水が継続的に必要です。一方で生み出す雇用は投資規模の割に少なく、地域への恩恵が限られるとして以前から批判を受けてきました。

ホークル知事が今回踏み切った直接の要因は、電力インフラの逼迫です。ニューヨーク州の家庭向け電力料金は 2019 年以降で約 68 %上昇しており、住民の負担は年々重くなっています。今年 7 月 4 日の独立記念日の連休中には熱波と電力需要の急増が重なり、当局が住民に室温を約 26 ℃以下に抑えるよう呼びかける場面もありました。建設計画が浮上しているランシングやイースト・フィッシュキルといった自治体では住民の反発も根強く、世論調査では回答者の 46 %が今回の建設停止を支持しています。

こうした住民感情はニューヨーク州固有の問題ではありません。ロイター/イプソスの調査では、データセンターの急速な拡大を歓迎するアメリカ人は 3 人に 1 人にとどまり、大多数が自分の地域への建設に反対しています。全米では 14 の州議会が規制法案を検討し、 12 以上の州で建設の一時停止が提案されてきましたが、いずれも法律として成立した例はなく、一部の自治体が独自に建設を制限するにとどまっていました。連邦議会でもバーニー・サンダース上院議員やアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員らが全国規模の規制を訴えており、ニューヨーク州の今回の決断はこうした流れの中でついに実現した初の州レベルの措置といえます。

停止期間中、州は環境許可の新規発行を凍結したうえで、データセンターが電力・水・大気などの地域環境に与える影響を包括的に評価します。あわせて 60 日以内に地域向けの投資指針をまとめ、インフラ整備や財政支援の枠組みを整える予定です。なお、すでに許可を得ている施設の工事は引き続き進められます。

業界側の反発は強く、データセンター業界団体は「投資や雇用がバージニア州・テキサス州などに永久に流れてしまう」と警告しています。ホークル知事は「他の州も続くべきだ」と強調しており、今回の措置が全国的な規制モデルになるかどうかが今後の焦点です。