画像生成 AI で知られる Midjourney が、2026年6月17日に医療分野への参入を発表しました。CEO の David Holz 氏が新たに立ち上げた「Midjourney Medical」が手がけるのは、全身を超音波で立体的に可視化する「Midjourney Scanner」です。
テキストから画像を生成する AI ツールで成長してきた同社が、なぜ医療機器に進出するのか。Holz 氏はその理由について、「十分な早期スクリーニングが行われれば、世界の死亡の30%、医療費の50%を減らせる可能性がある」と説明しています。
スキャナーの仕組みは比較的シンプルです。利用者は浅いプールに入り、体の周囲を移動するセンサーリングが超音波を照射します。放射線や強力な磁場は使わず、水と音波だけで全身を撮影し、約60秒でミリメートル以下の精度を持つ3D画像を生成することを目指しています。処理するデータ量は毎秒17GBに達するとされ、技術規模の大きさがうかがえます。
この技術の土台となっているのが、超音波デバイスメーカー Butterfly Network との提携です。Midjourney は2025年11月に同社と独占ライセンス契約を結び、一時金1,500万ドル(約 24億円)、さらに年間1,000万ドル(約 16億円)のライセンス料を支払う条件となっています。Butterfly Network 側は、5年間で最大7,400万ドル(約118.4億円)の収入を見込んでおり、この発表を受けて同社の株価は約31%上昇しました。
Midjourney が普及モデルとして描いているのは、スキャナーを備えたスパ施設です。2027年にはサンフランシスコのユニオンスクエアに第1号店「Midjourney Spa」を開業する予定で、約2,320㎡の空間にスキャナー約10台のほか、サウナやコールドプランジも設置する計画です。
特徴的なのは、これを従来の健康診断としてではなく、「リラクゼーションのついでに健康データが得られる体験」として設計している点です。将来的には、6年以内に世界で5万台を展開し、月間10億件のスキャンを目指すとしています。
一方で、現時点では大きな課題も残っています。FDA の医療機器認可はまだ取得しておらず、スキャンを体験した人数も約12名に限られています。さらに、実際のスキャン時間は目標の60秒ではなく、現状では約20分かかるとされています。
放射線科医からは、臨床的な裏付けが不十分だという批判も出ています。同社が示している性能数値も、現段階では自社試算にとどまっており、第三者による検証はまだ行われていません。
画像生成 AI で築いたブランド力と資金力を武器に、Midjourney は医療分野というまったく異なる領域に踏み出しました。しかし、医療機器として普及するには、規制対応、臨床的な有効性、安全性の証明という高い壁を越える必要があります。その真価が問われるのは、まさにこれからです。
