Meta の AI 研究部門 Meta Superintelligence Labs は 2026 年 9 月 1 日、会話をリアルタイムでテキスト化する AI モデル「 Muse Voice Transcribe 」を発表しました。同部門の設立以来、初めての音声認識モデルのリリースとなります。 Meta CEO のマーク・ザッカーバーグも X (旧 Twitter )でデモ動画を公開し、複数の話者をリアルタイムで聞き分けながら文字起こしを行う様子を実演しています。
注目すべきは、 20 名以上の話者が同時に参加する長時間の会議音声でも、誰がいつ何を話したかをリアルタイムで識別できる点です。従来のシステムでは、テキスト変換・話者識別・発話終了の検出をそれぞれ別の処理で行う必要があり、話者数が増えるほど精度や速度の面で課題が生じていました。 Muse Voice Transcribe はこれら 3 つの処理をひとつの AI モデルに統合することで、後処理なしにリアルタイムで動作します。大人数が参加する全社会議やカンファレンスの議事録作成といった用途でも、十分な実用性が期待できます。
精度面でも高い水準を示しています。音声認識の誤り率を示す単語誤り率( WER )は 3.1% を達成しており、 OpenAI の GPT Live Transcribe ( 3.9% )や Google の Gemini 3.5 Transcribe Live ( 4.0% )を上回り、主要な第三者ベンチマークで首位を獲得しています。話者識別の精度を測るダイアリゼーションのベンチマークでも、比較対象の 5 モデルを上回る結果を出しています。発言が終わってからテキストが表示されるまでの時間は約 0.16 秒と短く、会話の流れを妨げません。なお、精度のベンチマークは英語を前提とした評価であるため、他言語での性能は別途確認が必要です。
多言語対応も実用的な水準にあります。 70 以上の言語で学習済みで、リリース時点で 25 言語の動作が確認されており、会話の途中で言語を切り替えるケースにも対応しています。日英混在のような場面が多いグローバルビジネスの現場でも活用しやすい設計です。
利用料金は API 経由で 1 時間あたり 0.18 ドル(約 27 円)です。ストリーミングの有無にかかわらず料金は変わらず、データを外部に保持しないセキュアなオプションも同額で利用できます。すでに Mac 向けの Meta AI アプリや開発ツール Muse Code に組み込まれており、 Mac では Fn キーを長押しするだけでどのアプリでも音声入力が可能です。なお、モデル自体は非公開で、自社サーバーへの独自展開には対応していません。
今回の発表は、 Google が Gemini 3.5 Transcribe をリリースした約 1 週間後と時期が重なり、音声文字起こし市場における大手の競争は新たな局面を迎えています。同市場は 2034 年までに 1,040 億 5,000 万ドル(約 15 兆 6,075 億円)規模に成長すると予測されており、 Meta の本格参入がこの分野の競争環境を大きく動かすことになりそうです。
