Anthropic の CEO ダリオ・アモデイ氏は 2026 年 7 月 27 日、オープンウェイトモデルに関する同社の立場をブログで明らかにしました。業界団体への不参加が批判を集める中、沈黙を破る形での発信となりました。
今回の発表には直接的なきっかけがあります。中国・北京の Moonshot AI が開発した大規模モデル「 Kimi K3 」が 2026 年 7 月 26 日に一般公開され、米国トップクラスのモデルに匹敵するとされる性能を大幅に低いコストで実現したとして、業界内で広く注目を集めました。
この動きを受け、 NVIDIA のジェンスン・フアン CEO は 2026 年 7 月 24 日、オープンウェイトモデルへの規制に反対する公開書簡「 Open Weights and American AI Leadership 」を X 上で共有しました。署名企業は当初の 25 社から翌日には 50 社へと拡大し、 OpenAI や Google も名を連ねました。しかし Anthropic と Amazon は参加を見送り、特に Anthropic には「安全を理由に自社ビジネスを守ろうとしている」との批判が向けられていました。
アモデイ氏はこうした批判に対し、「 Anthropic はオープンウェイトモデルをカテゴリーとして禁止することを求めておらず、これまでもそうした主張はしていない」と明確に否定しました。危険な能力を持たないオープンモデルについては「公共財として重要だ」とも述べています。
その上でアモデイ氏は、禁止に代わる具体的な政策として 3 点を提示しました。先端半導体の中国への輸出規制の強化、米国モデルの能力を低コストで模倣できるようにする産業規模の「蒸留」への規制、そしてオープン・クローズドを問わず高性能なモデル全般へのリリース前の安全テストの義務化です。
書簡に署名しなかった理由についてアモデイ氏は、「オープンウェイトモデルが防衛側に有利だという主張には同意できない」と説明しています。生物兵器のように、防御より攻撃の手段が整いやすい分野では、モデルの広範な公開がリスクを高める可能性につながる、との考えです。
こうした懸念の背景には、具体的な事案もあります。 Anthropic は 2026 年 6 月 10 日付の書簡で米上院銀行委員会に対し、アリババ傘下の Qwen AI ラボと関係する業者が同年 4 月 22 日から 6 月 5 日の間、約 2 万 5,000 の不正アカウントを使って自社 AI 「 Claude 」と 2,880 万回以上やり取りを行ったと主張しました。同社はこれを、自社モデルの能力を不正に複製しようとする「産業規模の蒸留攻撃」と位置づけています。
今回のアモデイ氏の発信は、「オープンかクローズドか」という二項対立を超え、能力に応じた安全基準の整備こそが本質的な議論だという Anthropic の立場を改めて示したものです。非常に高性能なオープンモデル「Kimi K3」の公開が直接的な契機となり、中国 AI の急速な台頭と不正な技術流用の疑惑が重なる中、 AI 規制の在り方をめぐる議論は政策立案の場のみならず業界全体で一段と熱を帯びてきています。
