中国 IT 大手の Alibaba は 2026 年 8 月 3 日、同社の AI モデルシリーズ「Qwen」における最大規模の新モデル「Qwen3.8-Max」を正式発表しました。同モデルは 2026 年 7 月 19 日に上海で開催された World AI Conference(WAIC)で初めて披露されており、今回の正式発表を受けてクラウド経由での API 提供が始まっています。モデル本体のデータは翌週以降にオープンウエイトモデルとして一般公開される予定です。
技術面では、「MoE(Mixture of Experts)」と呼ばれるアーキテクチャを採用しています。これは、モデル全体では 2.4 兆パラメータという巨大な規模を持ちながら、実際の処理時には入力に応じて必要な「専門家(エキスパート)」だけを稼働させる仕組みで、動作時のパラメータ数は約 950 億に抑えられます。これにより、大規模モデルならではの表現力を保ちながら、推論コストを大幅に下げられる点が競合モデルとの差別化要因となっています。
コンテキストウィンドウ(一度に処理できる情報量)も大きく、最大100万トークン(1M)となっていて、200 ページを超える文書や、約 100 時間分の映像を 1 回のリクエストで処理できるとされています。加えて、テキストだけでなく画像や動画も入力として扱えるマルチモーダル対応となっており、幅広い用途に活用できる設計になっています。
Alibaba がとりわけ強調しているのが、このモデルの「自律性」です。単なる質問応答ツールではなく、数日から数週間にわたる業務プロジェクトを自分で判断しながら進める「AI エージェント」として設計されていて、社内テストでは実際のソフトウェア開発プロジェクトを 16 日間にわたって自律的に進めたと報告しています。
性能評価では、研究論文の再現性を測る「PaperBench」で 93.0 点と首位を記録し、指示への対応精度を測る「IFBench」でも競合を 10 ポイント以上引き離しています。一方で、幅広い知識を問う「Humanity’s Last Exam」では他社モデルを下回るなど、得意不得意がはっきりと分かれる結果でした。
市場の反応も好調で、発表当日に Alibaba の香港上場株は 7 % 上昇しました。中国の AI 開発競争は引き続き激しく、今回は小型版の「Qwen3.8-27B」の無償公開も合わせて発表されています。
