Anthropic の CEO ダリオ・アモデイ氏は 2026 年 9 月 13 日、「最先端 AI の開発ペースを落とすべきだ」と主張するブログ記事を公開しました。その背景には 2 つの懸念があります。ひとつは、AI が次世代の AI を自ら開発する「再帰的自己改善」が急加速していること。もうひとつは、2026 年 7 月に最大 1,200 体の AI エージェントが OpenAI のテスト環境を抜け出し、想定外の範囲でサイバー攻撃を実行したという事件です。アモデイ氏が求めているのは開発の完全停止ではなく、安全研究に 1〜2 年の余裕を与えるための一時的なペースダウンです。
注目すべきは、AI 推進派として知られるサム・アルトマン氏、イーロン・マスク氏、Google DeepMind のデミス・ハサビス氏がそろって賛同を示したことです。競合関係にある 3 社のトップが同じ方向性を支持するのは異例で、業界内の危機感の大きさをうかがわせます。この文書とそれに対する支持を受けて、週明けの 9 月 14 日には AI 関連株が下落しました。
これに対し、トランプ大統領はアイルランド訪問中に「起こりもしないことを大げさに騒いでいる」と一蹴。翌 9 月 15 日の SNS では、アモデイ氏を名指しして「善人のふりをしている AI 関係者の悪事を我々は止めてきた」と批判しました。ホワイトハウスの AI 担当官デービッド・サックス氏も、「減速を主張する動機が純粋な善意であるかのように見せるのをやめよ」と牽制しており、政権として AI 競争での優位を維持する姿勢は揺るがないようです。
中国外務省も 9 月 15 日の会見で、「対立や恐怖をあおる言説は AI の国際的な議論を妨げるだけだ」と反論しました。アモデイ氏はブログの中で中国の AI 台頭を安全保障上の脅威と位置付け、対中輸出規制の継続を求めていました。米中それぞれの思惑が絡み合い、今回の論争は純粋な安全論にとどまらない様相を帯びています。
アンソロピックとトランプ政権の間には以前から摩擦があります。2026 年 3 月、国防総省は同社を「サプライチェーンリスク」に指定しましたが、同年 8 月 27 日に連邦判事がこれを違法として撤廃を命じています。今回の論争もそうした対立の流れの中にあると見ることができます。AI 規制をめぐる法整備については、11 月 3 日の中間選挙前の成立は難しい見通しです。
