中国政府が、国内企業の最先端 AI モデルを海外から利用できないようにする規制の導入を検討していることがわかりました。Reuters が 2026 年 7 月 7 日に報じたもので、中国商務省が過去 1 カ月間にわたり Alibaba 、 ByteDance 、スタートアップの Z.ai と協議を続けてきたとされています。複数の関係者が明らかにしました。
検討されている規制案の柱は、 AI モデルを能力に応じて段階的に管理する仕組みです。高度なモデルにはセキュリティ審査を義務付け、最先端モデルについては国内利用のみに限定することが議論されています。さらに、自国の AI 技術が外部に流出した場合を国家安全保障法上の犯罪として扱う案も浮上しています。規制の対象は輸出禁止にとどまらず、モデルの内部データを広く公開する「オープンウェイト」と呼ばれる形式にも及ぶ可能性があります。ただし、関係者はいずれも「まだ何も決まっていない」と強調しています。
規制の対象として名前が挙がっているのは、 Alibaba の Qwen 、 ByteDance の Doubao 、 Z.ai の GLM-5.2 です。中国の AI サービスは近年、世界市場での存在感を急速に高めており、 2026 年 4 月時点では AI モデルの流通プラットフォームである OpenRouter のアクセス全体の 45 % 超を占めるまでになっています。 1 年前はわずか 2 % 未満だったことを考えると、その伸びは顕著です。
こうした規制検討の背景には、深刻化する米中間の技術摩擦があります。米国の AI 企業 Anthropic は 2026 年 2 月、 DeepSeek など中国企業 3 社が約 2 万 4,000 の不正アカウントを使い、自社モデルの Claude から大量の応答データを収集する行為を行ったと公表しました。他社のモデルを使って自社モデルを強化するこの手法は「Distillation Attack(蒸留攻撃)」と呼ばれています。 Alibaba も同年 7 月 10 日から Claude Code を「高リスクソフトウェア」に指定して社内利用を禁止し、自社開発の AI ツールへの切り替えを進めています。
専門家が今回の報道で特に注目するのは、規制の具体的な内容よりも、その背後にある思想の転換にあります。各国政府が AI モデルの普及や流通を、エネルギーや通信網と同じ「戦略インフラ」として扱い始めているという点で象徴的な動きとなりす。仮に中国が規制を実施すれば、これまで世界の AI 価格を引き下げてきた安価な中国モデルの供給が細り、 OpenAI や Anthropic 、 Google といった米国勢が新興国市場で収益を取り戻す余地が生まれます。一方、欧州やその他の国にとっては安価な選択肢を失うことを意味し、交渉力のさらなる低下につながる恐れがあります。
今後は自国内でAIモデルを開発する「ソブリンAI(AI主権)」の重要性がより高まっていくものと思われます。
