Meta は 2026 年 6 月 3 日、ロンドンで開催したカンファレンス「Conversations」で、AI を活用したビジネス支援ツール「Meta Business Agent」の世界展開を正式に発表しました。約 2 年間にわたる限定提供を経て、いよいよ本格的なグローバルリリースとなります。
マーク・ザッカーバーグ CEO は「バーミンガムの洋服店もサンパウロのパン屋も、大手企業と同じように 24 時間対応の顧客体験を実現できる」と語り、規模を問わずすべての事業者が恩恵を受けられるサービスを目指すと強調しました。
この AI エージェントは、顧客からの問い合わせ対応、商品の提案、予約受付、商談の進捗管理、取引の締結まで幅広い業務を自動化できます。対応が難しい場面では担当者に引き継ぐ機能も備えており、完全な自動化と人的対応をうまく組み合わせた設計になっています。WhatsApp・Messenger・Instagram では毎日 10 億件以上のビジネス関連メッセージが交わされており、そうしたやり取りの自動化をこのエージェントに任せることができるようになります。エージェント自体は数分で設定でき、顧客の言語や企業のトーンに合わせて自動的に返答できます。
導入実績も着実に積み上がっており、既に 100 万社以上がこのエージェントを WhatsApp と Messenger 上で活用しています。週あたりの処理会話数は今年 1 月以降で 10 倍に増え、現在は週 1,000 万件に達しています。WhatsApp の有料メッセージング収益は 2025 年 12 月時点で年換算 20 億ドル(約 3,000 億円)を超えています。これは企業が顧客へのメッセージ送信に対して Meta に支払う費用を集計したもので、Meta が WhatsApp を広告以外の収益源として本格的に育てていることを示す数字です。
大企業向けには、Shopify や Zendesk など主要な業務ツールと連携できる「Meta Business Agent Platform」も用意されています。料金体系については、当初は無料で提供され、数ヶ月以内に有料化される予定です。中小企業には月額制のサブスクリプション、大企業には利用量に応じた従量課金が適用される見通しです。Meta が企業向け AI サービスで直接課金するのは初めてのことで、これまで広告収入にほぼ全面的に依存してきたビジネスモデルからの大きな方向転換となります。
OpenAI・Google・Anthropic など各社が AI エージェントの開発を急ぐ中、Meta が持つ最大の強みは WhatsApp・Instagram・Facebook・Messenger を合わせた数十億人規模のユーザー基盤です。企業と顧客のやり取りがすでにこれらのプラットフォーム上で日常的に行われているため、AI をそこに自然な形で組み込める点が競合との差別化につながっています。同社は今年、AI インフラへの投資として最大 1,450 億ドル(約 21 兆 7,500 億円)を見込んでおり、Business Agent はその投資を回収する柱のひとつと位置づけられています。
ただし、発表直前には別の AI サポートエージェントがサイバー攻撃を受け、著名な Instagram アカウントに不正アクセスされる事案が発生しました。Meta はエージェント本体とは別のシステムに脆弱性があったと説明しており、現在も詳細を調査中です。
