NVIDIA は 2026 年 6 月 1 日、台湾・台北で開催された GTC Taipei にて、新チップ「 RTX Spark 」を正式に発表しました。 CEO のジェンスン・フアン氏が登壇し、 Microsoft と 3 年かけて共同開発した成果だと説明しました。同氏は RTX Spark を「 AI 時代に向けた PC の再発明」と位置づけています。
これまで PC には CPU と GPU がそれぞれ別のチップとして搭載されていましたが、 RTX Spark はその両方を 1 枚のチップに統合しています。 CPU 部分は MediaTek が設計に協力した 20 コアの ARM 製プロセッサー、 GPU 部分は NVIDIA の最新世代「 Blackwell 」アーキテクチャを採用しており、両者の間は高速な専用回路で直結されています。搭載メモリは最大 128 GB で、 AI の演算性能は 1 ペタフロップに達します。単体 GPU の性能でいえば、デスクトップ向けの RTX 5070 とほぼ同等クラスとされています。
実際の用途としては、大容量の 3D データ処理や 12K 映像の編集、大規模な AI モデルをインターネットに接続せずにパソコン上で動かすといった作業が可能です。また、 AI の動作を管理する新機能「 OpenShell 」も発表されており、どの情報を外部に送信するかをユーザー自身が制御できる仕組みが整えられています。
搭載製品は厚さ 14 mm・重量約 1.36 kg の薄型ノート PC と、卓上に置けるコンパクトなデスクトップ PC の 2 形態で展開される予定です。 ASUS 、 Dell 、 HP 、 Lenovo 、 Microsoft Surface 、 MSI などが製品を発売し、ノート PC だけで 30 機種以上が計画されています。 Adobe も Photoshop と Premiere を RTX Spark 向けに作り直し、 AI とグラフィクス処理の性能を 2 倍に引き上げると発表しています。
今回の発表は、製品の話にとどまらず、 NVIDIA の事業戦略の転換を示すものとしても注目されています。これまで同社の収益の大部分は、クラウド事業者や大手 IT 企業が巨大なデータセンターに導入する高価な GPU によって支えられてきました。しかし、 AI モデルの軽量化が進むにつれ、クラウドに頼らずとも手元の端末で十分な AI 処理をこなせる環境が整いつつあります。 NVIDIA がエッジ側、つまり個人の PC に本格的に進出した背景には、こうした技術トレンドを新たな収益源として取り込む狙いがあると見られています。
データセンター市場が一部の大手顧客に依存しやすい構造であるのに対し、エンドユーザー向けの PC 市場は裾野が広く、長期的な需要の安定にもつながります。「 AI をクラウドで借りる」から「 AI を手元で持つ」という方向への移行が進むとすれば、 RTX Spark はその入り口となる製品になりうるでしょう。
発売は 2026 年秋の予定で、価格はまだ公表されていません。業界アナリストの Jason Tsai 氏( DigiTimes )は、一般への普及には 1,500 ドル(約 22 万 5,000 円)前後の価格帯が必要だと見ています。 NVIDIA 製のチップが Windows PC の中心的なプロセッサーとして採用されるのは今回が初めてであり、今後の普及に向けては、ソフトウェアの対応拡大や既存の PC エコシステムとの互換性確保が引き続き課題となります。
