資金調達

米投資会社 Long Lake 、 Amex GBT 買収で AI ロールアップ戦略を本格化

米投資会社 Long Lake 、 Amex GBT 買収で AI ロールアップ戦略を本格化
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AI を活用したサービス業の変革に特化する投資会社 Long Lake Management が、世界最大級の法人向け出張管理会社である American Express Global Business Travel( Amex GBT )の買収を発表しました。 2026 年 5 月 4 日に発表された本取引の総額は約 63 億ドル(約 9,450 億円)で、株主には 1 株あたり 9.50 ドルの現金が支払われます。この価格は直近 30 日間の平均株価を約 65% 上回るもので、取引完了後、 Amex GBT はニューヨーク証券取引所への上場を廃止し、非公開会社に移行します。

Amex GBT はもともと 2014 年にアメリカン・エキスプレスから独立した会社で、 2021 年に株式市場へ上場しました。出張管理という分野で世界トップの地位を築く一方、古いシステム基盤への懸念が株価の重しになっていたという事情もあります。直近では 2025 年にライバルの CWT を 5 億 4,000 万ドル(約 810 億円)で買収するなど事業拡大を急いでおり、 2025 年度の売上高は 27 億ドル(約 4,050 億円)に達していました。

買収する側の Long Lake は 2023 年創業と、まだ歴史の浅い会社です。ビジネスモデルはシンプルで、デジタル化が遅れたサービス業の会社を買収し、独自の AI プラットフォーム「 Nexus 」を使って業務を効率化する、というものです。 CEO の Alex Taubman 氏は「 AI が定型的な手配業務をこなし、人間のエージェントはより複雑な対応に集中する。そういう形で、出張に関わるすべての体験を改善したい」と語っています。

今回の買収資金には既存投資家に加え、米国の大手コングロマリット、コーク・インクの投資部門である Koch Equity Development も出資します。また、アメリカン・エキスプレス、 Expedia 、カタール投資庁、 BlackRock の 4 社が Amex GBT 株の合計約 69% を保有しており、いずれも今回の取引を支持する意向を示しています。なかでもアメリカン・エキスプレスは保有する約 30% の株式を約 15 億ドル(約 2,250 億円)で売却し、税引前で約 9 億 7,500 万ドル(約 1,463 億円)の利益を得る見込みです。

この取引が注目されている背景には、「 AI ロールアップ」と呼ばれる新しい投資の潮流があります。従来型の M&A が規模の経済によるコスト削減を主な目的としていたのに対し、 AI ロールアップは業務プロセスそのものを AI で作り直すことで収益性を高めることを狙います。 Long Lake を支援する General Catalyst は、同様のアプローチで法務分野の Eudia 、コールセンター事業の Crescendo 、 IT サービスの Titan MSP なども展開しており、この戦略の有力な推進役となっています。本取引は株主および規制当局の承認を経て、 2026 年下半期に完了する見通しです。