Anthropic 政府・行政のAI取り組み

Anthropic の Mythos AI、ホワイトハウスが民間アクセス拡大に反対ー関係改善の動きも

Anthropic の Mythos AI、ホワイトハウスが民間アクセス拡大に反対ー関係改善の動きも
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4 月頭に Anthropic が発表した最新 AI モデル「Claude Mythos Preview」は、ソフトウェアの未知の脆弱性を自律的に発見・悪用できる高い能力を持つとして注目を集めています。悪用リスクを懸念した Anthropic は一般公開を見送り、AWS や Microsoft、Google など主要テック企業と連携する業界コンソーシアム「Project Glasswing」を通じた限定的な運用にとどめています。

今回の焦点は、Anthropic がこの限定提供の対象企業を約 50 社から 120 社近くに拡大しようとしたことです。この計画に対してホワイトハウスは反対の意向を示しました。懸念は大きく 2 つあります。一つは悪用リスクというセキュリティ面、もう一つは政府自身の利用に必要な計算リソースが不足するという実務面です。Anthropic は「計算能力は問題ではない」と反論しつつも、「政府とは協議を続けている」と表明するにとどめています。

米政府との関係は、年初より続く Anthropic とペンタゴン(国防総省)との対立が事態を複雑にしています。2026 年初頭、機密環境での AI の利用方法をめぐる意見の食い違いがエスカレートし、国防総省は通常であれば外国の敵対勢力に適用される「サプライチェーンリスク」の指定を Anthropic に対して適用しました。これに対し、連邦地裁は 2026 年 3 月 24 日、この指定は「言論の自由への違法な報復」にあたるとして差止命令を出しましたが、その後も国防長官のピート・ヘグセス氏が 4 月 30 日の議会証言で Anthropic を名指しで批判するなど、対立は収まっていません。

そうした中、ホワイトハウスは、Anthropic との関係を見直す動きを見せています。現在、国家安全保障機関向けの AI 活用指針をまとめた政策メモの策定が進んでいますが、その中では Anthropic のサプライチェーンリスク指定を外し、Mythos を含む新モデルの政府利用を認める内容が含まれるとされています。スージー・ワイルズ首席補佐官とスコット・ベッセント財務長官は今月初め、Anthropic CEO のダリオ・アモダイ氏と直接会談しており、関係改善に向けた対話は始まっています。

ビジネス面でも Anthropic の勢いは際立っています。Bloomberg によれば、同社は 9,000 億ドル超(約 135 兆円)の企業価値を前提とした新たな資金調達を検討中で、実現すれば OpenAI を抑えて世界最高の評価を受ける AI スタートアップになります。評価額は 2025 年 3 月の 615 億ドル(約 9 兆 2,250 億円)から 2026 年 2 月には 3,800 億ドル(約 57 兆円)へと急上昇しており、今回の政府との協議の行方は、会社の展開計画だけでなく、高度な AI を政府がどう管理していくかという問いそのものを左右する局面となっています。