SaaS 大手各社が総額 705 億ドルの自社株買いを発表、株安への対応鮮明に

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米国上場のソフトウェア企業が 2026 年 1 月 12 日以降に承認した自社株買いの総額が、705 億ドル(約 10 兆 5,750 億円)に達しました。これは前年同期比で約 4 倍の水準であり、SaaS セクター全体が株価下落への対応として積極的なキャッシュリターンに動いていることを示しています。

最も大規模な発表を行ったのは Salesforce です。CEO の Marc Benioff 氏は 2026 年 2 月 26 日の決算説明会で、総額 500 億ドル(約 7 兆 5,000 億円)の自社株買いを公表しました。資金の半分にあたる 250 億ドル(約 3 兆 7,500 億円)は社債で調達され、返済は 2066 年まで続く見込みです。同氏は「現在の株価は割安だ」と述べ、すでに 1 億 300 万株の買い取りに着手しています。

ServiceNow は 2026 年 1 月 28 日に 50 億ドル(約 7,500 億円)の追加自社株買いを取締役会が承認し、20 億ドル(約 3,000 億円)の加速買い付けプログラムの実施も予告しました。CEO の Bill McDermott 氏は自ら 300 万ドル(約 4 億 5,000 万円)相当の株式を個人購入し、保有継続を公約しています。SAP も 115 億ドル(約 1 兆 7,250 億円)の計画を発表。Okta が 10 億ドル(約 1,500 億円)、Snowflake が 11 億ドル(約 1,650 億円)、DocuSign が 20 億ドル(約 3,000 億円)の追加枠をそれぞれ承認しています。

こうした動きの背景には、SaaS セクターへの急激な売り圧力があります。Jefferies はこの下落局面を「SaaSpocalypse」と呼び、Asana が 1 年で約 59 %、DocuSign が約 52 % 下落するなど、主要銘柄の時価総額から合計 3,000 億ドル(約 45 兆円)が失われました。AI の普及によって顧客が自社開発で SaaS 機能を代替できるようになるとの懸念が、売りを加速させた主因です。

市場関係者の見方は分かれています。Morgan Stanley のシニア PM である Andrew Slimmon 氏は「業績不振後の自社株買いは株価下落を食い止める試みだ」と冷静に分析します。Synovus Trust のポートフォリオマネージャー Daniel Morgan 氏も、「投資家は長期的なファンダメンタルズ見通しに焦点を当てる」として効果に懐疑的な姿勢を示しています。一方、Wedbush のアナリストは売られすぎとの立場から、AI 新興企業がエンタープライズ市場を席巻するという懸念は誇張されていると主張しています。

経営陣が大規模な自社株買いを通じて「株価は過小評価されている」とのメッセージを発信し続ける中、SaaS 各社の業績回復力と AI 時代における競争力が、今後の評価を左右する重要な焦点となっています。