イーロン・マスク氏が率いる AI 企業 xAI は 2026 年 5 月 14 日、開発者向けの AI コーディングツール「Grok Build」を上位プランの加入者に先行公開しました。5 月 25 日には提供範囲を拡大し、SuperGrok および X Premium+ の加入者であれば誰でも使えるようになっています。
Grok Build の使い方はシンプルです。開発者がやりたいことを言葉で伝えると、AI がまず作業計画を提示します。人間がその計画を確認・修正してから実行に移せる仕組みになっており、作業後の変更点も見やすい形で一覧表示されます。複数の処理を同時並行で進める機能も備わっており、発表のデモでは一つの指示から 20 の処理が同時に走る場面が紹介されました。大規模なシステムの調査や改修など、工数のかかる作業を自動化する用途が想定されています。
もう一つの特徴は、搭載モデル「Grok 4.3 beta」が持つ 200 万トークンという大きな処理容量です。トークンとは AI が一度に読み込めるテキストの量を示す単位で、200 万トークンは競合の Claude Code の 2 倍にあたります。大量のコードや仕様書をまとめて読み込ませた状態で作業できるため、規模の大きなシステムへの対応で有利になります。複数の AI モデルの回答を並べて比較できる「Arena Mode」も搭載されており、品質の確認にも活用できます。
料金は 3 段階で設定されています。最上位の SuperGrok Heavy は月額 299 ドル(約 44,850 円)で、プロモーション価格として最初の 6 カ月は月額 99 ドル(約 14,850 円)になります。また、5 月 25 日からは月額約 30 ドル(約 4,500 円)の SuperGrok と、月額約 40 ドル(約 6,000 円)の X Premium+ の加入者も利用可能になりました。自社サービスや社内ツールへの組み込みには API 経由での従量課金も用意されており、入力 100 万トークンあたり 0.20 ドル(約 30 円)、出力 100 万トークンあたり 1.50 ドル(約 225 円)と、競合と比べてかなり低い水準に設定されています。
一方、AI コーディングツールの性能を測る業界標準の指標「SWE-Bench Verified」では、Grok Build は 70.8% という結果でした。OpenAI の Codex CLI(88.7%)や Anthropic の Claude Code(87.6%)とは 15 〜 18 ポイントの差があります。ベータ版であること、そして今回が xAI にとって初めてコーディング用途に特化して開発したモデルであることを考えると、今後の改善が期待されるところです。
AI コーディングツールをめぐる競争は激しさを増しており、Claude Code・Codex CLI・Grok Build という 3 つの主要ツールが直接競合する構図が整いつつあります。業界では「精度を重視するなら Claude Code、コストを抑えて大量処理をこなすなら Grok Build、IDE と連携したいチームなら Cursor」という使い分けが定着しつつあるようです。企業が開発組織に AI ツールを導入する際の選択肢は、着実に広がっています。
