米エネルギー省( DOE )が、電力会社 Vistra に対して約 42 億ドル(約 6,300 億円)の融資を検討していることが明らかになりました。エネルギー長官 Chris Wright 氏が 2026 年 10 月 6 日(月)、オハイオ州レイク・エリー沿岸にある Vistra の原子力発電所で正式に発表する予定です。
ただし、今回の融資はまだ確定したものではありません。現時点では米エネルギー政策法 Title XVII に基づく「融資保証の提案」という段階にとどまっており、最終的な条件や実行可否は今後の交渉次第です。
資金の使い道は、 Vistra が国内に保有する 4 カ所の原発のうち少なくとも 3 カ所で、発電出力を引き上げる工事です。対象とみられるのは、オハイオ州のペリー発電所(約 1.3 GW )とデービス・ベッセ発電所(約 900 MW )、およびペンシルバニア州のビーバーバレー発電所( 2 基合計約 1.9 GW )の 3 施設です。この出力増強は、燃料の高濃縮化やタービン交換といった既存設備の改修で実現するため、新たな原子炉を建設する場合と異なり、原子力規制委員会( NRC )の新規許認可を取り直す必要がありません。時間とコストを抑えながら供給力を高められる点が、現実的な選択肢として注目されています。
こうした動きを後押ししているのが、 AI データセンターの急拡大に伴う電力需要の増加です。米国では 2030 年までに新たに 100 〜 160 GW のピーク電力が必要になると見込まれており、そのうち約 90 GW は AI ・データセンター関連の需要が占めると予測されています。トランプ政権は 2050 年までに原子力の発電容量を現在の 4 倍に増やす目標を掲げており、今回の融資はその政策の一環です。
Vistra 自身も、電力供給だけにとどまらない戦略を描いています。 2026 年 1 月には Meta と 20 年間の電力購入契約( PPA )を締結し、原子力由来の無炭素電力を安定供給する枠組みを整えました。さらに 6 月には、 KKR 、クウェート投資庁、 NVIDIA と共同で「 Helix Digital Infrastructure 」を設立。 100 億ドル(約 1 兆 5,000 億円)超の資本を投じてデータセンターの建設と電力供給を一体で手がける事業で、 Vistra はその優先電力供給パートナーに位置づけられています。その後、 Samsung グループも 10 億ドル(約 1,500 億円)を追加出資しており、同プロジェクトへの注目度の高さがうかがえます。
株式市場では、 Bloomberg が本件を報じた後に VST 株が一時 135.79 ドルまで売られましたが、その後は 139.20 ドル台に持ち直しています。政府保証付きの融資が実現すれば、現在 5.24 % 台で推移する米 10 年債利回りと比べて大幅に低いコストで資金を調達できるため、設備投資の採算性が改善すると市場は見ています。
