英国政府と Google 、住宅開発を加速する AI ツール「 Extract 」を発表

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英国政府と Google は、住宅やインフラ開発の意思決定を劇的に加速する AI ツール「 Extract 」を発表しました。このツールは Google の最先端 AI 「 Gemini 」を活用し、膨大な計画書類の処理時間を従来の 2 時間から最短 40 秒にまで短縮します。

英国では年間約 35 万件の都市計画申請が行われていますが、その多くが紙やスキャン PDF 、手書きメモなどアナログな形式で管理されています。申請ごとに数百ページに及ぶ書類を担当者が手作業でチェックする作業に、年間 25 万時間以上が費やされており、これが住宅供給やインフラ整備の大きなボトルネックとなっていました。

Extract の最大の特徴は、多様な形式の情報を理解できることです。 Google の Gemini AI はテキストや手書き文字、画像、地図、図面など様々な情報を読み取ることができます。例えば、ぼやけた古い地図や手書きの注釈からも、開発制限区域や住所、日付などを正確に特定し、現代の地図上に正しく位置を表示します。

実際の効果は非常に大きく、従来 1 〜 2 時間かかっていた 1 件の書類デジタル化作業が、わずか 40 秒から 3 分で完了するようになります。変換されたデータは構造化されて検索や分析、共有が簡単になり、計画担当者はより戦略的な業務に専念できるようになります。

すでにヒリングドン、ウェストミンスター、ヌニートン&ベッドワース、エクセターの 4 つの自治体で試験導入が始まっており、2026 年春までに全イングランドの自治体で利用可能となる予定です。英国政府は次の議会期間中に 150 万戸の住宅建設を目指しており、 Extract の導入はその実現を強力に後押しします。

キア・スターマー首相は「時代遅れの計画システムが重要なインフラ開発を遅らせ、必要な住宅建設を阻んできました。 Extract は AI の力を活用してプランナーの負担を軽減し、意思決定を加速させます」と述べています。

経済効果も期待されており、手作業の大幅削減により年間 5 億 2700 万ポンド(約 1000 億円)の節約効果が見込まれています。また、計画改革と合わせて GDP を 6 億 8000 万ポンド(約 1290 億円)押し上げる効果も予測されています。

今後は計画書類全般への対応拡大や、現場で即座にスキャンできるアプリ化なども検討されています。変換されたデータは政府の公開プラットフォームで一般公開され、透明性や市民参加の向上にもつながります。

Extract は英国の「紙中心・手作業依存」の都市計画システムを AI で根本的に変革し、住宅・インフラ開発のボトルネック解消を目指す画期的なプロジェクトです。将来的には医療、教育、警察など他の公共分野への AI 活用拡大も期待されており、行政のデジタル化を推進する重要な一歩となりそうです。