テスラの「We, Robot」イベント考察:ロボタクシーサービスの具体性欠き株価下落

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現地時間10月10日に開催されたテスラの「We, Robot」イベントは、当初8月8日に予定されていたロボタクシーの発表イベントが延期となり、その代替として行われました。イベントでは、2人乗りの完全自動運転車両「Cybercab」や20人乗りの「RoboVan」、ヒューマノイドロボット「Optimus」が披露され、会場は盛り上がりを見せました。

しかし、翌日の株式市場ではテスラ株が9%近く下落しています。これは、事前に期待されていた既存のテスラ車両を活用したロボタクシーサービスの具体的な発表がほとんどなく、新しい車両やロボットの発表で「ごまかされた」ような印象を受けたため、です。

既存のモデル3やモデルYを活用したロボタクシーサービスについては、2025年にテキサスとカリフォルニアでドライバー不要の完全自動運転を稼働させる予定とされましたが、サービス開始時期は規制当局次第、との発言にとどまり、具体性に欠ける内容となってしまいました。

一方、競合のWaymoは既に長期間にわたり市街地でのテストを重ね、サンフランシスコやロサンゼルス、フェニックスなど全米の複数都市で「実際の」ロボタクシーサービスを開始していて、その導入される都市の数を着実に増やしています。

テスラが完全自動運転のテストを来年から始めるというのでは、規制当局の承認を得るまでに数年を要する可能性もあり、その間にWaymoがサービス展開で大幅に先行してしまうことが懸念されます。またWaymoのボトルネックとなっている車両のコストについても量産化やソフトウェアの最適化により着実にコストダウンを図っていて、今後、当局の営業承認を受けた都市では、後発の参入余地を残さないほど車両の数を増やしていくものと思われます。

イベントに参加したメディアや個人は新しいハードウェアに触れた高揚感から概ね高評価をしているようですが、事前の期待が高かった分、市場関係者には失望感が広がっています。ただし、テスラは実車両から吸い上げている膨大な走行データと、それを活用するコンピューティング施設「Dojo」を有しており、(SpaceXで不可能と思われたロケット開発を次々に成功させたイーロン・マスクであれば)もしかしたら驚異的なスピードで完全自動運転のAIモデルを作り上げられるかもしれない、という期待感はまだ残っています。

少なくともアメリカ市場においての話ですが、今後は、テスラが完全自動運転のソフトウェア(FSD)を早期に熟成させ、商用ロボタクシーサービスができるものに仕上げるのが早いか、あるいは、各都市の規制緩和のスピードが早く進み、Waymoが主要都市で圧倒的なドミナントの地位を得るのが早いか、スピード勝負になっていくものと思われます。