SpaceX の AI 部門「SpaceXAI」は 2026 年 7 月 8 日、コーディング作業やエージェント型タスクに特化した新しい AI モデル「Grok 4.5」を正式に公開しました。同部門は 2 日前の 7 月 6 日に旧 xAI から SpaceXAI へと名称を改めており、今回はその新体制のもとで初めてリリースされたモデルとなります。
Grok 4.5 の開発にあたっては、SpaceXAI が 600 億ドル(約 9 兆円)の全株式交換で買収に合意した AI コーディングツール「Cursor」を手がけるスタートアップ、Anysphere との共同トレーニングが実施されています。膨大なコーディングデータを学習に活用しており、既存の開発ツールや開発者向けエージェントとの連携を想定した設計になっています。
性能面では、独立評価機関 Artificial Analysis の Intelligence Index で 54 点を獲得し、主要モデルのなかで 4 位に位置しています。プログラムの課題解決を競う SWE Marathon では首位を記録したものの、実際の GitHub 上の問題解決を評価する DeepSWE 1.1 では 53% にとどまり、GPT-5.5 の 67% や Fable 5 の 70% には及んでいません。また、AI が誤った情報を生成するハルシネーションの発生率が 25% から 54% に上昇している点も、課題として指摘されています。
一方で際立つのは価格の安さです。API の利用料金は入力トークン 100 万件あたり 2 ドル(約 300 円)、出力トークン 100 万件あたり 6 ドル(約 900 円)と設定されており、Anthropic の Claude Opus 4.8 の入力 5 ドル・出力 25 ドルと比べると大幅に低い水準です。Artificial Analysis はタスクあたりのコストを 0.49 ドル(約 74 円)と算出しており、「同等の性能帯のモデルと比べて約 90% 安い」と評価しています。
利用できるサービスは幅広く、米国では 7 月 8 日より Grok Build、Cursor(全プラン)、SpaceXAI コンソールで使用可能です。EU 向けは 7 月中旬の提供開始を予定しており、Microsoft Office の各アドインや OpenRouter、Vercel、Cloudflare といったプラットフォームにも対応しています。
今回のリリースには、市場における競争上の背景もあります。Cursor の AI コーディング分野でのシェアは 2025 年 6 月の 41% から 2026 年 5 月には約 26% まで低下しており、Anthropic が市場の約半分を握る状況が続いていました。SpaceXAI は性能で真っ向勝負するよりも、価格の低さで顧客を引き込む戦略を選んだかたちです。また、コンピューティングインフラ・AI モデル・開発者ツールという三つの要素を一社が抑える垂直統合の構造は前例が少なく、業界関係者や規制当局の間でも注目が高まっています。
