AI 調査会社 SemiAnalysis は 2026 年 10 月 5 日、Anthropic と OpenAI のサブスクリプションプランを実際に使い倒して比較したレポートを公開しました。執筆したのは Andrew Megalaa 氏、Max Kan 氏、Dylan Patel 氏の 3 名です。
レポートの主な切り口は「同じ月額料金で上限まで使った場合、どれだけの処理量まで利用できるか」という「量の比較」です。具体的には、各プランの利用上限に達するまで実際に使い続け、その消費量を API の公式料金に換算することで「もし API で同じ量を使ったらいくらかかるか」を算出しています。この換算額が大きいほど、定額料金に対して多くの処理量が含まれている、つまり「お得なプラン」と言えます。
今回の測定は、AI が自律的に複数のタスクをこなす「エージェント型」の用途を想定して実施されました。その結果、月額 $20(約 3,000 円)の Claude Pro は API 換算で $1,178(約 17.7 万円)分の処理量に相当することがわかりました。同じ $20 の ChatGPT Plus は $211(約 3.2 万円)相当にとどまり、約 5.6 倍の開きがあります。月額 $200(約 3 万円)のプランでも同様の傾向が見られ、Claude Max 20x が $11,726(約 176 万円)相当であるのに対し、ChatGPT Pro は $2,084(約 31.3 万円)相当と、いずれの価格帯でも Claude 側が一貫して約 5 倍以上の数値を記録しています。
ここで注意しておきたいのは、この「5 倍」という数字が何を意味しているか、です。これは処理できる情報量を単純に金額に換算して比べた数字であり、「Claude の方が 5 倍賢い」「回答の質が 5 倍高い」ということではありません。AI としての性能や使いやすさは、また別の評価軸で判断する必要があります。加えて、換算の仕組み上、Claude 側の数字が大きく出やすいという構造的な要因もあります。今回の比較で Claude 側に使われた Opus 5.5 は、そもそも OpenAI の比較モデルよりも 1 処理単位あたりの API 料金が高く設定されています。そのため、同じ量を処理しても Claude 側の換算額が自然と膨らむ仕組みになっており、この点は数字を読む際に頭に入れておく必要があります。
また、最上位モデル同士を比べると、話は変わってきます。Anthropic の Fable 5.1 と OpenAI の GPT-6 Astra を $200 プランで比較すると、前者が約 $2,485(約 37.3 万円)相当、後者が約 $2,897(約 43.5 万円)相当とほぼ互角です。「5 倍差」はあくまで中間モデルでの話と理解しておく必要があります。
この差が生まれた背景には、両社の真逆とも言える料金戦略があります。OpenAI は 2026 年 9 月 29 日の開発者向けイベント DevDay で、$200 プランの利用枠を実質半分に削減すると発表しました。価格は据え置きのまま使える量を減らすという、ユーザーにとって厳しい改定です。同時に月額 $500(約 7.5 万円)の上位プラン「Pro 500」も新設しています。一方 Anthropic はこの時期に逆の動きを見せており、主力プランの利用上限をむしろ引き上げていました。最近発表されたその戦略の違いが今回の結果に如実に現れた、と言えます。
SemiAnalysis はレポートの締めくくりとして、「かつて OpenAI は個人開発者や小規模チームにとって最も使いやすい選択肢だったが、今はそうではない」と述べています。一方で同社は、Anthropic の戦略が財務的に成り立っているかについても疑問を投げかけています。Claude のサブスクリプションは現在、Anthropic が抱える計算リソース全体の約 42% を消費しています。ところが売上への貢献はわずか 10% 程度に過ぎず、コストと収益の間に大きな乖離が生じています( Anthropic の売り上げの中心は企業向けの API 売り上げがメインです)。言い換えれば、Anthropic は今のところ個人や小規模ユーザーに対して原価を大幅に下回る価格でサービスを提供している状態です。太っ腹な利用上限がユーザーを引きつける武器になっている半面、それが長期的に維持できるビジネスモデルかどうかは、現時点では見通しが立っていません。
