OpenAI の CEO サム・アルトマン氏が今週初め、社員に向けて「1年以内に上場する見込み」と伝えていたことが分かりました。米メディアの The Information が報じたもので、同社は 2026年6月8日 に SEC(米証券取引委員会)へ機密扱いの S-1 登録届出書の草稿を提出したことをブログで明らかにしています。この申請は、イーロン・マスク氏が起こした訴訟が陪審員によって棄却されてから 2日後のタイミングでした。
アルトマン氏は「スケジュールが前後する要因はいろいろあるが、今のうちに申請しておくことで、早期上場の選択肢を持てる」と説明しています。複数の報道では 2026年9月〜11月が現実的な上場時期とされていますが、 SEC の審査には通常 60〜90 日かかることを踏まえると、 9月という線は相当タイトな見立てです。
もうひとつ注目されるのが、アルトマン氏が「再帰的自己改善( RSI )」に触れた点です。 AI が自律的に次世代の AI を開発できるようになるという技術の到達点を指すもので、「その可能性が現実味を帯びてくるほど、非公開のままでいた方が動きやすい」とアルトマン氏は語っています。上場企業になると、四半期ごとの業績開示や株主への説明責任が生じ、急激な事業転換や大規模な追加投資を機動的に行いにくくなります。 RSI のような技術的な跳躍が起きた場合、経営の方向性を大きく・素早く変える必要が出てくるため、株式市場のしがらみがないうちに動ける体制を保っておきたいという考え方です。上場の判断軸が財務戦略だけでなく、技術の進化スピードにも連動しているという点は、通常の IPO にはない特徴といえます。
企業価値については、 2026年3月に Amazon や Nvidia 、 SoftBank らが参加した資金調達ラウンドで 8,520 億ドル(約 127.8 兆円)が直近の評価額として確定しています。 IPO では 1 兆ドル(約 150 兆円)超を目指しており、実現すれば史上最大規模の上場となります。売上高は 2026年第 1 四半期だけで約 57 億ドル(約 8,550 億円)に達し、年換算では 300 億ドル(約 4.5 兆円)を超える水準です。ただし収益面ではまだ赤字が続いており、 2026年の損失は 140 億ドル(約 2.1 兆円)に上ると見込まれています。黒字転換は早くても 2030年頃になる見通しです。
社員向けには近日中にテンダーオファー(保有株の買取)を実施する予定で、現在の株価は 1 株当たり 687.69 ドル(約 10.3 万円)と案内されました。また最高科学責任者の Jakub Pachocki 氏は、社内でコードネーム「 5.6 」と呼ばれる新モデルを今月中にリリースする予定で、 GPT-5.5 から「大きく改善した内容になる」と社員に説明しています。
主幹事証券には Goldman Sachs 、 Morgan Stanley 、 JPMorgan の 3 社が候補として挙がっています。一方、競合の Anthropic は 1 週間早い 6月1日 に 9,650 億ドル(約 144.75 兆円)の評価額で機密の IPO 申請書を提出済みです。投資銀行筋は「先に上場した方が AI セクターで有利なポジションを取れる」と両社に助言しており、上場レースの行方が注目されています。
