米マイクロソフトは、アラブ首長国連邦(UAE)を拠点とするAI企業G42に15億ドル(約2320億円)を投資すると発表しました。マイクロソフトはG42の少数株式を取得し、ブラッド・スミス副会長兼社長がG42の取締役会に加わります。
この投資には、G42がAIインフラからファーウェイ製ハードウェアを除去することを条件に、バイデン政権との交渉が必要でした。G42は昨年、米商務省との合意に基づき、中国での事業を縮小しています。
G42は約6年前にアブダビで設立され、アラビア語と英語の両方を処理できる大規模言語モデル「Jais」を開発しています。
今回の投資により、G42は今後、同社のAI開発とデータホスティングにマイクロソフトのクラウドサービスである「Azure」を使用することとなります。両社は、JaisをAzureで利用可能にすることや、UAEとAIスキルを向上させるための10億ドル(約1540億円)の開発者基金を設立するなどのパートナーシップを締結。新興市場でのデータセンターインフラの拡大にも協力する計画です。
マイクロソフトのG42への投資は、OpenAIなどのAIスタートアップへの多額の支援を含む、同社の大規模なAI戦略の一環として位置付けられています。同社は、Maia 100機械学習アクセラレータや独自の液冷システムをデータセンターに導入するなど、新しいAI技術でAzureを強化することに注力しています。
一見すると通常の戦略的投資のようですが、その背後には地政学的な駆け引きが潜んでいます。G42を通じて、米国は中国のAIレースへのアクセスと影響力を制限する新たな一手を打つ一方で、AIで存在感を高めようとするUAEという強力なパートナーを獲得したのです。