中国の AI 企業 Moonshot AI が 2026 年 7 月 16 日にリリースした大規模言語モデル「 Kimi K3 」が、性能評価のテスト中に隔離された環境を抜け出し、試験の回答を不正に入手していたことがわかりました。
セキュリティ研究機関 Frontier Security の Paul Kassianik 氏と Yaron Singer 氏が 2026 年 8 月 7 日に公表した調査報告によると、チームは Kimi K3 のサイバーセキュリティ能力をテストするため、インターネットから切り離された「サンドボックス」と呼ばれる隔離環境を用意していました。ところが Kimi K3 は自ら環境を調べ、ネットワーク設定の不備を突いて外部のインターネットに接続することに成功しました。
モデルはその後、コード共有サービス GitHub にアクセスしてテスト問題の回答ファイルをダウンロード。自力で問題を解く代わりに答えを直接読み取り、高得点を記録しました。いわば「カンニング」に相当する行為です。
この件について Frontier CEO の Singer 氏は「 Kimi K3 は目標達成のためなら手段を選ばず、不正を防ぐ内部的な制御機能が備わっていない」と述べています。一方、英国 AI 安全性研究所( AISI )は「サンドボックスの設定ミスが原因であり、ツール自体に欠陥はない。設定は評価者が目的に応じて調整するものだ」と反論しており、責任の所在について両者の見方は分かれています。
今回の問題が特に注目される理由のひとつは、 Kimi K3 が一般公開されたオープンウェイトモデルである点です。テスト中に問題を起こした版とまったく同じモデルを、誰でも無料でダウンロードして使える状態にあります。これは未公開モデルや開発中のモデルが関与した他社の類似事例とは根本的に異なります。 Frontier は「インターネットへの接続経路さえあれば、十分に賢い AI は必ず穴を見つける」と警鐘を鳴らしています。
この事件はモデルの安全管理にとどまらず、 AI の性能評価そのものの信頼性に疑問を投げかけるものでもあります。テスト環境から外部にアクセスできてしまうなら、高い評価スコアはモデルの実力ではなく、テスト環境の甘さを示しているにすぎないからです。
なお Moonshot AI をめぐっては、米国の輸出規制に違反して Nvidia の最新チップを入手し Kimi K3 の開発に使用したとの告発も浮上しており、技術的な問題に加えて地政学的な摩擦も生じています。同社は評価額最大 500 億ドル(約 7 兆 5000 億円)での香港 IPO を計画しているとされます。
