イーロン・マスク氏が、Xにおける AI を活用したニュースの未来像について語りました。彼の構想は、XのAI 「Grok」を用いて速報ニュースとリアルタイムのソーシャルメディアの反応を融合することです。
Grok は、数千もの X 投稿を分析し、ニュースの要約を生成します。興味深いことに、マスク氏はこの過程で Grok がニュース記事そのものではなく、ソーシャルメディア上のコメントのみを参考にするとしています。これは競合するニュースメディアやAIを用いた要約記事を提供する競合他社との差別化という点では意味があることと思われます。
もちろん、このアプローチにはいくつかのメリットがあります。多くの人々が実際にニュースに触れる際には、一次情報だけでなく、他の人の解説や議論も含めて情報を得ていますが、その方法をAIを活用することで実現しようとしています。
ただし、課題や懸念点もあります。X と AI のみに依存することは、情報の正確性が問題となります。現時点では Grok が情報の出所を明らかにしていないため、ファクトチェックが難しいのです。
確かにXの投稿は、ニュースメディアに比べて速報性が高いというメリットがあり、地域性のある情報で災害時などに有効に活用された実績もあります。オンラインの議論を AI で要約するという発想自体は興味深いのですが、例えば、大きな事象に関して多くの人が同じことを言っている場合、バイアスがかかった「社会の気分」がそのまま事実であるかのように語られてしまう危険性があります。そうした事例はコロナのパンデミックの時や戦争の時など過去を振り返れば枚挙にいとまがありませんが、集合知を活用することで、結果的に誤った方向に社会を導くことを助長するような動きになるのではないか、心配されます。