2024年年末、今使うべき有料AIチャットボットは?
2024年も残すところわずかとなり、OpenAIやGoogleなどAI各社が続々と新製品や新機能をリリースしています。そこで今回は、年末のこのタイミングで「今、使うべき有料AIチャットボット」について整理します。主な比較対象は、すでに多くのユーザーが利用しているChatGPT、自然な文章生成で知られるClaude、そして最近2.0への大幅アップデートを行ったGoogle Gemini。さらに番外編として、オープンソース由来の完全無料ツールであるLlamaやMistralシリーズにも触れてみます。
ChatGPT、Claude、Geminiはそれぞれ無料で使える範囲もありますが、その中で有料に登録して、日常の色々な場面で使い倒したいサービスはどれか、という観点で見てみていただければと思います。
総合力でおすすめなのはChatGPT Plus(月額20ドル)
結論から言えば、現時点で有料AIチャットボットを選ぶなら、ChatGPTのPlusプラン(月額20ドル=約3千円)を強くおすすめします。
その理由は以下の通りです。
- 調べ物から文章生成まで一通り対応
ChatGPTは、11月に「ChatGPT Search」機能が正式にリリースされたことで、検索能力が格段に向上しました。最新ニュースや幅広いトピックの調査が可能で、ビジネス文書やプログラミングまであまり深く考えずに「とりあえず何でも聞いてみる・依頼してみる」だけで、必要に応じて検索をしながら回答を生成してくれるため、ワンストップで多くの作業を完結できます。 - 多彩なモデル選択が可能
また、新たにo1やo1 miniなど、より深い思考や高度な推論が求められるタスクに特化したモデルも利用できるようになりました。プログラミングはもちろん、もう少し深く考えて回答して欲しいと感じたら、こうしたモデルを使用して、4oモデルの結果と見比べてみることもできます。使用制限はありますが、Plusユーザーなら4oやo1シリーズを使い分けることで、自分の用途に合わせた出力を得られます。 - 画像・動画生成までカバー
ChatGPTはテキストベースのチャットボットでありながら、画像生成や、(生成数に限定はあるものの)動画生成(Sora)にも対応しています。これにより、たとえばアイデア出しから画像素材の作成まで、こちらもワンストップで進行可能です。
このように、ChatGPTの利点はワンストップで、現状AIで考えられるほとんどの主要な作業が完結してしまうところが魅力です。もちろん、検索であれば、Perplexityの方が良かったり、画像生成はMidjourneyの方がいい、PDFの理解力はClaudeの方が上、など機能別には他社サービスを利用した方がいい場面はありますが、そこの差はだんだん縮まってきています。オールマイティに、それなりに高いクオリティで何でもできる、という点で、現時点ではChatGPT Plusに登録をしておけば、一般的には十分なのではないかと考えます。
また、今回、「12 days of OpenAI」という新製品発表イベントの中で、Plusより上位のProユーザー(月額200ドル=約3万円)が追加されました。Proユーザーになると、最上位モデルのo1 Proが使えるようになります。o1 Proはプログラミングタスクなどでは、o1モデルよりも優れていると評判ですが、通常業務ではそこまで必要でない場合が多そうです。ですので、プロのシステム開発者はProユーザーを検討してもいいと思いますが、一般ユーザーであればPlusで十分と言えるでしょう。
Claudeの魅力と限界
2023年の発表当初から日本語の自然な文章生成で抜群の安定感を示していたClaudeは、現在もその強みを維持しています。特に世代が一つ前のClaude3.0 Opusは、テキストの自然さではいまだに他をリードしていると感じることが多いです。もちろん、最新のClaude3.5 Sonnetも性能向上が謳われていて、各社が新製品を続々と発表している現時点でも、他のモデルと比べても遜色のないベンチマーク数値となっていますが、現状の問題は「インターネットへ接続されていない」こと。これが日常的に使用するには大きなボトルネックとなっています。
- 強み: 日本語での文章生成が非常に自然、PDFの読み取り精度が高い
- 弱み: 最新情報には対応できず、調べ物用途では別のサービスに移行する必要がある
もちろん、調べ物はPerplexityなど別でやって、作業はClaudeで、といった使い分けをすればいいのですが、ChatGPTのように一つのインターフェイスで全てが完結してしまうサービスが登場すると、ついそちらの方が便利なため、Claudeの使用頻度が下がってしまいます。純粋なライティングやアイデア出し、コーディング補助など用途を限定すれば依然有用ですが、オールラウンダーとしてChatGPTに劣る状況になっています。
*2024/12/21 >追記:ただし、1点だけ、PDFファイルの読み取りの精度はChatGPTやGeminiに比べて非常に高いです。こうした作業のある方はClaudeをお勧めします。
Google Gemini 2.0に期待したいが、現状は惜しい
今回、Google Gemini 2.0が発表されました。2.0は、1.5と比べて大幅な性能向上を遂げ、プログラミングタスクへの対応力も強化されたと報じられています。さらに、今年前半に話題となったProject Astraを統合し、将来的にはGoogle Glass的なウェアラブルデバイスと連携し、「日常生活をサポートするエージェント」へと進化をする道筋が具体的になってきました。ただ、本格的に利用できるようになるまでは精度も、他のデバイスとの連携も今ひとつ、というところが実情で、来年の前半くらいにはある程度色々なものが整理されて「使える」形になってくるのではないかと思います。
また、Geminiの強みとして、Gmailやスプレッドシート、DocsといったGoogle Workspace関連ツールとの統合があります。この辺りはMicrosoftのCopilotサービスと競合するところですが、ビジネス向けのツールでAIアシスタントとして連携するあたりも(まだ完璧ではないものの)少しずつ実現してきています。
また、AI検索の「AI Overview」機能もGemini 2.0搭載で一層の精度改善が見込まれ、AI検索を活用していない人たちにも、Google検索を使うと自動的にAIによる要約が表示される割合が高まる見込みです。そうした、Googleがこれまでに培ってきたエコシステムを活用できる点がGeminiの強みと言えます。
しかし、特に日本語での使用ということを考えると、回答の自然さが現状ChatGPTやClaudeより半歩遅れている印象です。また、過去に何度も繰り返してきた「とんでもない回答」への反省でガードレールが過剰になり、たとえば政治と無関係なトピックにもTrumpという言葉が入っているだけで回答拒否するなど、使い勝手の面でまだ改善の余地が大いにあります。
本来は、Googleの総合力を活かして先頭を走っていていいはずなのですが、いまいちパッとしない印象がGeminiです。Gemini 2.0でこの問題がどこまで解消されるか、今後の進化に注目したいところです。
無料選択肢としてのLlamaやMistral
最後に有料ツールではありませんが、無料ツールとして存在感を増す、オープンソース系LLMであるLlamaやMistralに触れておきます。
- Llamaシリーズ(Meta):
Meta.ai経由で英語環境下では非常に高品質な回答を返しており、ChatGPTの4oやGeminiと比較しても遜色ありません。また、同プラットフォームの画像生成AIも優秀です。ただし、日本からのアクセスは制限され、日本語性能もまだまだ低め。徐々に他の地域からのアクセスが開放されていく中、不自然なほど日本は後回しにされています。将来的な日本対応に期待したいところです。 - Mistralシリーズ:
MistralのLe Chatは登録することで無料利用が可能で、ウェブ検索にも対応しています。ただし、日本語入力時のインターフェース挙動がおかしくなる時が多いのが惜しいところです。回答精度や自然さでは有料モデルに近いものがありますし、無料でネット検索までできる点は大きな利点。日本からもアクセスできますし、無料にこだわるのであれば、ChatGPTやClaude、Geminiの無料版と併せてMistralも試してみる価値はあります。
まとめ:現状はChatGPT Plusがベストチョイス
2024年年末時点で、総合的な使い勝手・性能・対応範囲を考えると、ChatGPTのPlusユーザー(月額20ドル)を利用するのが最もバランスのとれた選択といえます。Claudeは自然な文章生成力を武器に依然魅力的な部分はあるものの、最新情報への対応不足が足を引っ張ります。Google Geminiはビジネス連携や多機能アシスタントとして将来性があり、今後の改善次第ではChatGPTを脅かす存在になり得るでしょう。
無料ツールとしてのLlamaやMistralも、英語圏や特定条件下での利用には非常に有望で、将来性は十分です。とはいえ、現時点で「さぁ、今すぐ仕事や調べ物、コンテンツ制作などにガンガン使いたい!」というニーズでは、ChatGPT Plusが一歩リードしていると思います。