医療分野

AI設計のバクテリオファージが初めて患者に投与される

AI設計のバクテリオファージが初めて患者に投与される
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米 Radical Numerics 社は 2026 年 10 月 20 日、自社の AI モデル「 Omnii-1 」が設計したバクテリオファージ(細菌を攻撃するウイルス)を患者に投与したと発表しました。 AI が設計した生物学的製剤が実際の患者治療に使われたのは、これが初めてのケースです。投与は FDA の特例制度「コンパッショネート・ユース」(他に治療手段がない重篤患者向けの人道的使用制度)のもとで行われました。

患者が抱えていたのは、薬剤耐性を持つ大腸菌による感染症でした。抗生物質はもちろん、既存のファージ製剤にも反応しない、手詰まりの状態だったといいます。抗生物質耐性は今後 25 年間で約 4,000 万人の命を奪うと予測されており、医療業界全体が解決策を急いでいる問題です。

Omnii-1 は、 DNA や RNA 、タンパク質など 28 種類の生物学的データを横断的に学習する AI モデルです。今回の治療では、 AI がまず 70 万種ものウイルスゲノムを生成。その中から 285 種を選んで実際に合成し、最終的に 16 種が機能するウイルスとして完成しました。設計から完成まで数週間という速さで、実験室での有効性確認を経て投与に踏み切っています。

同社が設立されたのは 2025 年夏で、まだ 1 年余りのスタートアップです。それでも Emergence Capital や Stripe 創業者の Patrick Collison 氏らが出資し、シードラウンドで 5,000 万ドル(約 75 億円)を調達しています。 CEO の Eric Nguyen 氏はスタンフォード大学で博士号を取得し、ゲノム AI モデル「 Evo 」の共同開発者としても知られる人物です。

ただし、今回の発表を額面通りに受け取るには慎重さも必要です。技術的な内容は自社サイトで公開されているものの、学術誌への掲載や第三者による査読は済んでいません。患者の詳細や治療の結果についても「守秘義務がある」として非公開の状態で、外部の研究者からは「科学的な検証がまだ不十分」という声が上がっています。

カナダ・ Ottawa Hospital の感染症専門医 Marisa Azad 博士は「これまでのファージ療法の難しさは、適切なウイルスを探し出す作業が手探りだったことにある。 Omnii はその問題を根本から変える可能性がある」と語っています。同社は今後、個別化がんワクチンの設計や生物兵器への対応といった分野にも展開を広げる計画で、米 Lawrence Livermore 国立研究所との連携も進めています。