AI 企業 Anthropic が株式公開( IPO )に向けた目論見書を提出したことが、 2026 年 9 月 28 日付の Reuters の独占報道で明らかになりました。同社は AI アシスタント Claude の開発元として知られており、純粋な AI 研究開発企業として初めて株式市場に上場する事例として、投資家や業界関係者の注目を集めています。
2025 年通期の売上高は約 46 億ドル(約 6,900 億円)で、前年の約 3 億 8,600 万ドル(約 579 億円)から約 12 倍に急拡大しました。ただし収益性は依然として厳しく、営業損失は約 80 億 6,000 万ドル(約 1 兆 209 億円)にのぼります。会計上の純損失は約 419 億 7,000 万ドル(約 6 兆 2,955 億円)と巨額ですが、そのうち約 340 億ドル(約 5 兆 1,000 億円)は将来の株式転換権の評価替えによる非現金項目であり、実際の現金流出ではありません。手元資金は 2025 年 12 月 31 日時点で約 202 億 8,000 万ドル(約 3 兆 420 億円)を確保しており、財務的な余力は十分にあります。
今回の目論見書で特に注目されるのが、 5,180 億ドル(約 77 兆 7,000 億円)という巨額のクラウドインフラ契約です。これは確定済みの支払い義務であり、 2025 年の売上高の 100 倍超に相当します。内訳として、 Amazon の AWS に対しては今後 10 年で 1,000 億ドル(約 15 兆円)超を支出することを約束し、最大 5GW の計算能力を確保しています。 Google とも既存の契約に加え、 2027 年以降の大規模な処理能力の追加拡張で合意済みです。事業の根幹をこの 2 社のインフラに依存している構図は、目論見書のリスク要因にも明記されています。
IPO では 2 兆ドル(約 300 兆円)超の企業価値を目指しています。 2026 年 5 月時点の自社評価額 9,650 億ドル(約 144 兆 7,500 億円)と比べても 2 倍超の水準です。主幹事は Goldman Sachs 、 Morgan Stanley 、 JPMorgan Chase の 3 社が務め、上場先は Nasdaq が有力です。上場時期については、米国中間選挙( 11 月)後にずれ込む見通しと Reuters は報じています。
経営支配権については、 CEO の Dario Amodei 氏を含む 7 名の共同創業者が議決権の過半数( 51 %)を握る複数議決権構造が採用される予定です。また同社は Delaware 州の公益法人として設立されており、株主への利益還元だけでなく、 AI の安全性というミッションを経営判断に組み込むことができます。リスク開示は 80 ページに及び、 AI モデルが自己保存的な行動をとる可能性といった踏み込んだ内容も含まれています。
売上の伸びは加速しており、 2026 年 5 月時点の年換算収益は 470 億ドル(約 7 兆 500 億円)に達しているとされます。ただし 2 兆ドルという評価額はこうした高成長の継続を前提とした水準であり、現時点の売上に対して約 400 倍超の株価売上高倍率となる点は、投資家として冷静に受け止める必要があります。
