AI アシスタント「Claude」を提供する Anthropic が、Claude の生成テキストに目に見えないウォーターマーク(電子透かし)を埋め込む方針を発表しました。背景にあるのは、2026 年 8 月 2 日に発効した EU AI 法の透明性規定への対応です。Google・Meta・Microsoft・OpenAI など約 190 社も同規範に署名しており、AI 業界全体の動きとして注目されています。
電子透かしの仕組みは一般的なイメージとは少し異なります。文書に特殊な記号を埋め込むのではなく、Claude が文章を生成する際の単語の選び方に、ごくわずかな統計的な偏りを持たせる技術です。そのため、テキストをコピーして別の場所に貼り付けたり、ファイル形式を変換したりしても、透かしは消えません。画像などのファイル出力には、別途 C2PA という業界標準の出所情報が付与されます。この仕組みは Claude のすべてのサービスに世界規模で適用され、ユーザーが自分で無効にする方法はありません。
発表直後から、X(旧 Twitter)や Reddit では批判的な意見が多く寄せられました。反発の中心となったのは、学生ではなく弁護士・研究者・ライターといった専門職の人々です。彼らが問題視したのは、自分で書いた文章を Claude に校正させただけで、その文書が「AI 生成」としてマーキングされてしまう点です。弁護士の Peter Harrell 氏は「自分で書いた文章を微細な校正目的で AI を通しているだけなのに、AI が書いたものと見なされるのはおかしい」と指摘しています。ラジオパーソナリティの Erick Erickson 氏も「Grammarly から Claude に乗り換えたのは校正精度が高いからだが、今後は自分のコンテンツに AI の電子透かしが付いてしまうのか」と不満を示しました。
Anthropicは、電子透かしが検出されたとしても、それは「Claude が処理に関与した可能性がある」ことを示すにすぎず、Claude が文章を書いたことの証明にはならないと説明しています。また、短い文章や大きく手が加えられたテキストでは検出精度が落ちるケースもあるといい、技術的な限界についても率直に認めています。
OpenAI が実施した社内調査では、テキストに電子透かしが導入された場合に ChatGPT の使用頻度を減らすと答えたユーザーが約 30 % にのぼったとされています。Anthropic も同様の課題に直面しており、規制への対応とユーザー体験のバランスをどう取るかが問われています。EU 発の規制が世界標準へと広がっていく流れの中で、各社の対応に引き続き注目が集まりそうです。
