Meta は 2026 年 7 月 9 日、新しい AI モデル「Muse Spark 1.1」の有料提供を、企業や開発者向けに開始しました。Meta が自社の AI サービスをこのような形で直接販売するのは、今回が初めてです。
発表は、マーク・ザッカーバーグ CEO が 3 年以上ぶりに X(旧 Twitter)へ投稿する形で行われました。なかでも注目を集めているのが、競合を大きく下回る価格設定です。
料金は、処理するテキスト量に応じた従量制となっており、ザッカーバーグ氏は「Anthropic や OpenAI の同等サービスと比べて、約 4 分の 1 の価格」と説明しています。新規登録者には 20 ドル(約 3,000 円)分の無料利用枠も用意されています。現時点では、米国内の開発者を対象としたプレビュー提供です。
Meta がこれほど低い価格を設定できる背景には、同社の強固な広告事業があります。Meta は広告事業だけで四半期に約 550 億ドル(約 8 兆 2,500 億円)の売上を上げており、その収益を AI インフラへの投資に充てることができます。
そのため、AI サービスの価格を引き下げても、会社全体の収益への影響を抑えやすい構造になっています。一方、AI サービスの販売を主な収益源とする OpenAI や Anthropic にとって、同じ水準まで価格を下げることは容易ではありません。
「Muse Spark 1.1」は、ウェブ検索、ファイル操作、プログラムの実行など、複数のツールを組み合わせて複雑な作業を自律的に進める「エージェント型」の AI モデルです。
スマートフォンやパソコン上の操作も自動化できるほか、一度に処理できる情報量も業界トップクラスとされています。すでに OpenAI や Anthropic のサービスを利用している企業でも、大きなシステム変更を行わずに移行できる設計になっています。
ツールを活用した作業能力を測るベンチマークでは、Google や OpenAI の競合モデルを上回る成績を記録しました。一方、プログラムのバグ修正を自動化するテストでは、Anthropic の上位モデルを下回っています。エージェントとしての総合的な作業能力には強みがあるものの、コーディング分野には改善の余地が残っています。
組織面でも、Meta は AI 事業への投資を加速させています。AI スタートアップ Scale AI の創業者であるアレキサンダー・ワン氏を初代の最高 AI 責任者に迎え、140 億 3,000 万ドル(約 2 兆 1,045 億円)を投じて、社内に専門の研究組織を立ち上げました。
これまで Meta は、AI 技術を無償で公開するオープンソース戦略で知られてきました。しかし今回の有料サービス開始によって、AI を直接収益につなげる事業へと軸足を移し始めたことが明確になりました。
豊富な広告収益を背景に、競合よりも大幅に安い価格で AI サービスを提供する Meta の戦略は、業界全体の価格競争を激化させる可能性があります。発表を受け、Meta の株価は週間で 15%上昇し、2024 年初頭以来の高い上昇率を記録しました。
