EY と Microsoft は 2026 年 5 月 21 日、ロンドンで 5 年間にわたる大規模なグローバル協業を発表しました。両社は合計で 10 億ドル超(約 1,500 億円)を本パートナーシップに投資すると表明しています。この金額は協業体制の構築への初期投資として位置づけられています。具体的には、世界 4 都市への AI 拠点開設、専任エンジニアやコンサルタントの配置・育成、資格認定プログラムの開発・運営などが主な用途とみられます。
協業の狙いはシンプルで、多くの企業が「実証実験の段階(PoC: Proof of Concept)で終わってしまう」 AI プロジェクトを、実際のビジネスで使える本格運用の段階まで引き上げることです。そのために、Microsoft のエンジニアと EY のコンサルタントが一体のチームとして顧客企業に入り込みます。Microsoft 側は AI システムの構築や既存の社内システムとの接続を担い、EY 側は業務プロセスの見直しや社内への定着支援、リスク管理・コンプライアンス対応などを受け持ちます。対象とする業務領域は財務・税務・リスク管理・人事・サプライチェーン構築管理などで、金融・エネルギー・消費財・行政・医療といった業界向けにサービスを展開していきます。
EY はこのモデルを自社で先に試しており、実際に業務改善の結果を出していることが、導入企業への説得力を高めています。社内 15 万人に Microsoft Copilot を導入したところ生産性が 15 %向上し、例えば税務関連の業務への AI 活用では手作業を最大 90 %削減できたと報告しています。現在は全世界 40 万人超の従業員への展開を進めている段階です。
EY グローバル会長兼 CEO の Janet Truncale 氏は「顧客は Microsoft の技術力と EY の業界知識を、一つのチームとしてまとめて活用できる」と話しています。Microsoft Commercial Business CEO の Judson Althoff 氏は「AI はもはや試験的な取り組みではなく、企業の業績を左右する中心的な要素になりつつある」と述べています。
2026 年末までに、ロンドン・ニューヨーク・シンガポール・フランクフルトの 4 都市に AI センターを開設する予定で、コンプライアンス担当者やリスク管理者・ IT リーダー向けの「AI Governance Professional」資格認定プログラムも立ち上げる予定となっています。
デロイトや PwC 、KPMG など大手各社も AI 分野での存在感を高めようと動くなか、今回の発表は Microsoft が単なるソフトウェアの提供者にとどまらず、顧客企業の現場に自社エンジニアを送り込むビジネスモデルへ踏み込んでいることを示しています。
