Elon Musk 氏が率いる民間宇宙開発企業 SpaceX が早ければ 6 月にも株式上場(IPO)を実施する状況になっている中、OpenAI と Anthropic の 2 社も、年内の株式上場に向けた準備を本格化させています。
Anthropicは 2026 年 2 月の資金調達ラウンドで 380 億ドル(約 5 兆 7,000 億円)を集め、企業価値は 3,800 億ドル(約 57 兆円)に達しました。主幹事候補として JPモルガン・ゴールドマンサックス・モルガンスタンレーとの協議が進んでいるとされ、年間売上高は 300 億ドル(約 4 兆 5,000 億円)超まで拡大、 2028 年のブレークイーブン(損益均衡)も視野に入っています。 OpenAI は 2026 年 3 月 31 日に企業価値 8,520 億ドル(約 127 兆 8,000 億円)での資金調達を終え、早ければ今年 9 月の上場を目指しているとも報じられています。ただし 2026 年の最終損失は 140 億ドル(約 2 兆 1,000 億円)の見込みで、黒字転換は 2030 年以降とされており、スケジュールはまだ流動的です。
こうした高い企業価値の前提に疑問を投げかけているのが、低コストで高性能な AI モデルの急速な普及です。その先陣を切ったのは中国勢でした。 DeepSeek の最新モデルは出力 100 万トークンあたり 3.48 ドル(約 522 円)という価格で提供されており、 OpenAI の 30 ドル(約 4,500 円)や Anthropic の 25 ドル(約 3,750 円)と比べると大幅に安価です。性能面でも主要な評価指標で欧米モデルに迫る水準を達成しており、コストパフォーマンスの高さは企業にとって無視しにくい選択肢となっています。
ただし、中国製モデルには大きな壁があります。データが中国国内のサーバーに保管される仕様であるため、機密情報を扱う企業や政府機関は採用に踏み切れないケースが多く、実際の導入は限定的にとどまっています。つまり現時点では、「性能とコストは十分だが、信頼性の面で使えない」という状況が続いています。
そこに存在感を高めているのが、欧米のオープンソース LLM です。 Meta の Llama 4 はネイティブマルチモーダル対応の大規模モデルへと進化し、 Mistral の Medium 3.1 は Claude Sonnet 3.7 の 90 % 以上の性能を、 8 分の 1 以下のコストで提供するとされています。 94 のモデルを対象にした調査では、オープンソースモデルと商用モデルの性能差は現在「半年から 1 年程度」にまで縮まっており、その差はさらに縮小し続けています。データ管理の面で中国製モデルを避けたい企業にとって、こうした欧米オープンソースモデルは現実的な代替手段として浮上しつつあります。
問題は、これが両社の上場後の業績見通しに直結することです。 OpenAI や Anthropic の高いバリュエーションは、高性能な商用モデルへの継続的な需要と、それに見合う収益成長を前提としています。安全に使えて性能も十分な格安モデルが広く普及すれば、そのシナリオが崩れる可能性は十分あります。上場後の投資家が「なぜ数十倍のコストを払う価値があるのか」と問い始めたとき、両社がどう答えるかが株価の行方を左右することになるでしょう。
