中国の国家発展改革委員会(NDRC)は 2026 年 4 月 27 日、Meta が進めていた AI スタートアップ Manus の買収を認めず、両社に対して取引を白紙に戻すよう命じました。買収金額は約 20 億ドル(約 3,000 億円)とされていましたが、NDRC は「法律・規制に従い、Manus への外国投資を禁止する」と一言告知しただけで、具体的な理由は一切説明していません。
Manus は 2022 年に北京で創業されたスタートアップで、株価分析や営業資料の作成といった複雑な業務を自律的にこなす AI エージェントを開発しています。2025 年 3 月に正式公開されると注目を集め、米大手 VC の Benchmark が主導する 7,500 万ドル(約 112 億円)の資金調達に成功。企業評価額は 5 億ドル(約 750 億円)に達しました。その後、2025 年 7 月に本社をシンガポールへ移し、同年 12 月には Meta が買収を発表して Meta AI への機能統合を目指す方針を示していました。
ところが話はそれほど単純にはいきませんでした。買収発表後には Manus の社員約 100 人が Meta のシンガポールオフィスへ移籍し、Tencent や Hongshan(紅杉中国)といった既存投資家もすでに売却対価を受け取っていました。そうした状況の中で 2026 年 3 月には共同創業者 2 名が北京での NDRC との面談後に出国禁止処分を受けるなど、事態は複雑な様相を呈しています。業界関係者の間では「実際のところ、すでに完了した取引を完全に巻き戻すのは難しい。今回の命令は今後の類似案件への牽制であり、米中首脳会談を前にした外交的なカード切りという側面が大きい」という見方も出ています。
波紋はManus にとどまりません。NDRC はここ数週間で Moonshot AI や Stepfun など中国の主要 AI スタートアップに対しても、当局の明示的な承認なしに米国からの出資を受け入れないよう通達しています。シンガポール社会科学大学の Ben Chester Cheong 講師は「法人をシンガポールに移せば済むという時代は終わった。特許などの知的財産がどこに帰属するか、研究開発やデータ管理をどこで行っているかまで問われるようになる」と指摘しています。
Meta 側は「取引は関連法規を完全に順守していた」とコメントするにとどめました。今回の件は、中国が自国発の AI 技術や人材を単なるビジネス資産ではなく国家戦略の核として扱う姿勢を改めて内外に示した出来事として、広く受け止められています。
