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中間管理職は AI に置き換えられるか——Block のリストラが問いかけるもの

中間管理職は AI に置き換えられるか——Block のリストラが問いかけるもの

フィンテック大手の Block(旧 Square )は、 2026 年 2 月下旬に全従業員の約 40% にあたる約 4,000 人の削減を発表しました。人員は 1 万人超から 6,000 人未満へと大幅に縮小されます。リストラ費用は約 4 億 5,000 万〜 5 億ドル(約 675 億〜 750 億円)の見込みですが、投資家の反応は好意的で、発表後に株価は約 22% 上昇しました。

この決断の背景にあるのは、 AI によって組織の在り方そのものを変えられるという確信です。 2026 年 3 月 31 日、 Block の CEO であり Twitter (現 X )の共同創業者としても知られる Jack Dorsey は Sequoia Capital の Roelof Botha とともに「 From Hierarchy to Intelligence(階層制から知性へ)」と題したエッセイを公開しました。主張の核心はシンプルです。「企業に階層組織が生まれたのは、一人の人間が会社全体を把握できなかったからだ。 AI がその情報処理を担える今、管理職という層は不要になる」というものです。

Dorsey がこの確信を深めたのは、 2025 年 12 月のことです。 Anthropic の Opus 4.6 や OpenAI の Codex 5.3 を実際に使う中で、大規模なシステム開発でも AI が実戦に耐える水準に達したと感じたといいます。 Block が社内で展開するコーディングエージェント「 Goose 」はすでに成果を上げており、エンジニア 1 人あたり週 8〜 10 時間の工数削減、 2025 年 9 月以降は本番コードの出荷量が 40% 以上増加したと報告されています。

新たな組織では、管理職の代わりに 2 種類の AI システムが会社全体を「見える化」します。ひとつは社内の意思決定や業績指標をリアルタイムで集約するもの、もうひとつは顧客・加盟店の行動データを分析するものです。社員の役割はシンプルな 3 類型に整理されます。システムを作る専門職、 90 日単位で成果にコミットするオーナー、そして技術力を持ちながら後進育成も担うリード人材です。戦略判断や倫理的な意思決定は、引き続き人間が担います。

もっとも、懐疑的な見方も少なくありません。元・現 Block 社員の証言では、 AI が生成したコードの約 95% は依然として人間による修正が必要で、金融規制が厳しい送金や銀行業務の領域では AI の自律的な活用は難しいといいます。さらに、 2 月に解雇された社員の一部が 3 月に静かに呼び戻されたとも報じられています。コスト削減の名目として AI が使われているだけではないか、という「 AI ウォッシング」を指摘する声もあります。

Dorsey は「 1 年以内に多くの企業が同じ結論に至る」と予言しており、 Amazon や Meta でもすでに管理職層の削減が進んでいます。 Block の 2026 年通期粗利益ガイダンスは 122 億ドル(約 1 兆 8,300 億円)。 40% 少ない人員でこの目標を達成できるかどうかが、この新しい組織モデルの実効性を測る試金石となります。