米 Reutersによると、OpenAI は、競合関係にある Google と新たなクラウドコンピューティング契約を締結しました。これまで Microsoft Azure にほぼ独占的に依存してきた OpenAI が、ライバル企業である Google のクラウドサービスを利用するという異例の事態で、AI 業界に大きな衝撃を与えています。
この動きの背景には、OpenAI の爆発的な成長があります。2022 年末に ChatGPT を公開して以来、利用者数が急激に増加し、AI モデルの運用に必要な計算資源が想定を大きく上回るペースで拡大していました。そのため、Microsoft の Azure だけでは、この膨大な需要を満たすことが困難になっていたのです。
転機となったのは、今年 1 月に Microsoft との独占契約が終了したことです。これにより OpenAI は他のクラウド事業者との契約が可能になり、数か月の交渉を経て Google との合意に至りました。OpenAI は Google の TPU(テンソル処理ユニット)チップなどの計算資源を活用し、AI の開発と運用体制を強化します。
この契約は両社にとって大きなメリットをもたらします。OpenAI は Microsoft への過度な依存から脱却し、より安定したサービス提供が可能になります。一方で Google は、最大のライバルを顧客として取り込むことで、Amazon や Microsoft と競合するクラウド事業の拡大を図れます。
市場の反応も素早く現れました。契約発表後、Google の親会社 Alphabet の株価は 2.1% 上昇し、Microsoft の株価は 0.6% 下落しました。投資家は Google のクラウド事業拡大を評価する一方、ChatGPT が Google の検索事業に与える競争圧力を懸念する声もあります。
この提携は、AI 業界で起きている「計算資源争奪戦」の一端を表しています。AI の性能向上には膨大な計算能力が必要で、企業同士が競合関係にあっても、インフラ確保のために協力せざるを得ない状況が生まれています。実際に Google は、Apple や Anthropic といった他の AI 企業にもクラウドサービスを提供しています。
OpenAI の戦略はさらに多方面に広がっています。Google 以外にも CoreWeave や Oracle、SoftBank など複数の企業と提携を進めており、リスク分散を図っています。また、自社でのチップ開発も計画しており、将来的には外部への依存を減らしていく構想もあります。
OpenAI の CEO であるサム・アルトマン氏は「計算資源は未来の通貨になる」と述べており、AI 時代における計算能力の重要性を強調しています。今回の契約は、AI 業界の勢力図を大きく変える可能性を秘めた重要な出来事として、今後の展開が注目されています。