ディズニーとユニバーサルが 2025 年 6 月 11 日、AI 画像生成サービスを手がける Midjourney を著作権侵害で訴えました。ハリウッドの大手スタジオが AI 企業を相手取った初の本格的な訴訟として、業界に大きな波紋を広げています。
両社が提出した 110 ページの訴状は、Midjourney に対する激しい批判で埋め尽くされています。「底なしの盗作」「著作権にただ乗りする企業」といった厳しい言葉で非難し、同社の AI が膨大な著作権保護作品を無断で学習していると主張しています。
問題となっているのは、ユーザーが簡単な指示を入力するだけで、ディズニーやユニバーサルの人気キャラクターそっくりの画像を作れてしまうことです。スター・ウォーズのダース・ベイダー、アナと雪の女王のエルサ、ミニオンズなど、誰もが知る有名キャラクターが高品質で再現されてしまいます。
訴状には「ダース・ベイダーがパリのランウェイにいる」といった指示で、まるで映画スタジオが制作したような精巧な画像が生成された例が数多く示されています。両社はこれを計画的で悪質な著作権侵害だと断じています。
Midjourney は 2022 年に設立されたサンフランシスコの新興企業で、月額 10 ~ 120 ドルで AI 画像生成サービスを提供しています。Discord 上に 2,100 万人を超えるユーザーコミュニティを持ち、2024 年には約 3 億ドルの売上を記録するなど、急成長を遂げています。
両社によると、昨年から何度も Midjourney に警告を送り、著作権侵害をやめるよう求めてきました。しかし同社はこれらの要請を無視し続け、逆にサービスの機能向上や動画生成ツールの開発を進めているといいます。
今回の訴訟で、ディズニーとユニバーサルは厳しい処罰を求めています。侵害された作品 1 つにつき最大 15 万ドル(約 2,200 万円)の損害賠償に加え、Midjourney のサービス停止命令、学習データの公開、これまでの利益の返還なども要求しています。
この問題の背景には、AI 業界全体が抱える根深い課題があります。多くの AI 企業がインターネット上の画像や文章を無断で集めて AI の学習に使っており、著作権者との間で摩擦が生じています。すでに New York Times が OpenAI を、Getty Images が Stability AI を訴えるなど、同様の訴訟が相次いでいます。
争点となるのは「フェアユース(公正な利用)」という概念です。AI 企業は学習目的での利用は合法だと主張していますが、著作権者側は無断使用で商業利益を得ていると反発しています。ディズニーの法務責任者は「AI 技術は歓迎するが、盗作は盗作だ」とコメントしており、技術革新と権利保護の両立を求める姿勢を示しています。
音楽業界団体も両社の行動を支持しており、クリエイティブ産業全体で AI 企業への法的対応が広がる可能性があります。一方、既にアーティストらも個別に Midjourney を訴えており、多方面から圧力が高まっています。
この訴訟の結果は AI 業界の未来を大きく左右するでしょう。もし両社が勝訴すれば、AI 企業は著作権者からの許可取得やライセンス料の支払いが義務づけられる可能性があります。また、生成される内容への厳しいフィルター導入も求められるかもしれません。
ディズニーやユニバーサルという巨大企業が本格的に AI 業界と対決することで、今後はより厳格なルール作りが進むと予想されます。AI と著作権を巡る対立が本格化する中、この訴訟は業界の転換点となる歴史的な意味を持つかもしれません。