中国のスタートアップ「 Monica.im 」が、完全自律型の AI エージェント「 Manus (マヌス)」をリリースし、自律的に動作する AI エージェントの新たな境地を開いたと話題になっています。 2025 年 3 月 6 日にベータ版として招待制で公開された Manus は、従来の AI アシスタントとは一線を画し、人間の介入なしに複雑な実世界のタスクを自律的に実行できるという革新的な能力を持つとされています。
Manus の最大の特徴は、ユーザーがタスクを指示した後、デバイスを切断してもクラウド上で動作を継続し、結果を返す高度な自律性にあります。ウェブサイト構築、旅行計画作成、株価分析、履歴書スクリーニングなど、実用的かつ多岐にわたるタスクを処理可能で、ウェブを閲覧してデータを収集し、ワークフローをリアルタイムで表示する能力も備えています。
開発チームは、この AI が「 GAIA ベンチマーク」で OpenAI の「 Deep Research 」を上回る新たな最高性能( SOTA )を達成したと主張しています。GAIA は、 AI エージェントの実世界問題解決能力を評価するベンチマークで、レベル 1 から 3 の難易度でテストされます。公表されたデータによれば、 Manus はレベルで OpenAI のモデルをそれぞれ上回り、特にレベル 3 では 57.7 % 対 47.6 % と顕著な差を示しています。
Manus の開発を主導したのは、 Monica.imの共同創業者で33 歳の中国人起業家 ジ・イーチャオ( Ji Yichao 、通称「 Peak 」)です。彼は以前、モバイルブラウザ「 Mammoth 」を開発した実績を持ち、米国で Peak Labs を設立した経験もある技術者です。彼が 2023 年北京に設立した AI スタートアップ「 Monica.im 」は、 2024 年に多言語モデルを統合した AI アシスタント「 Monica 」をリリースしており、 Manus はその次のステップとして開発されたものです。
専門家たちは Manus を、 2023 年末に DeepSeek が GPT-4 に匹敵するモデルをリリースした「 DeepSeek モーメント」に続く、「第 2 の DeepSeek モーメント」と呼んでいます。これは中国の AI 戦略も米国同様に「受動的支援から自律的行動(チャットボットからエージェント)」へとシフトしている証拠だと指摘する声もあります。
Manus の発表後、中国の AI 関連株価指数が約 6 % 上昇し、投資家の期待の高まりを示しました。また、その招待コードがオンラインオークションで最低 400 元(約 55 ドル)以上、一部では 10 万元(約 139 万円)で取引されるなど、過熱している様子も報告されています。
筆者の視点:中国の AI スタートアップが、 AI エージェント分野でも米国をリードし始めたのではないかと話題になっています。公開された Manus のデモ動画を見る限り、確かに自律的に多様なタスクをこなしており、その実力がうかがえます。現在、 AI の進化は基盤モデルからエージェントへと移行する流れにあり、中国企業がこの分野でも米国に追いつき、さらには一歩先んじた可能性が指摘されています。ただし、現時点では招待制のベータ版に限られており、熱狂しているのは一部の層にとどまっています。今後、一般公開が進むにつれ、その真価が明らかになっていくでしょう。