マイクロソフト、革新的な量子チップ「Majorana 1」を発表

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マイクロソフトは2月19日、同社初となる量子コンピューティング向けチップ「Majorana 1」を発表しました。約20年に及ぶ研究開発の成果として生まれた同チップは、独自開発の新素材「トポコンダクター」を採用し、量子コンピューティングの実用化に向けた重要な一歩となっています。

注目すべき点は、同チップが搭載する「トポロジカル量子ビット」の特性です。従来の量子ビットが熱や磁場などの環境ノイズに弱いという課題を抱えていたのに対し、Majorana 1はマヨラナ粒子という特殊な準粒子を利用することで、ハードウェアレベルでのエラー耐性を実現。さらに、電圧パルスのオン・オフのみで量子状態を制御できる設計により、操作の簡素化とスケーラビリティの向上を達成しています。

現在のチップには8つの量子ビットが搭載されていますが、マイクロソフトは最終的に1チップに100万量子ビットを実装することを目標としています。これが実現すれば、新薬開発や自己修復素材の設計など、現在のコンピューターでは解決が困難な課題に、数年以内にも取り組めるようになる可能性があります。

この発表に対し、科学界では期待と慎重な見方が混在しています。一部の物理学者からはマヨラナ粒子の実用性やスケーラビリティへの疑問も提起されていますが、マイクロソフトは科学誌「Nature」での研究成果発表を通じて、その信頼性を裏付けようとしています。

量子コンピューティング分野では、2024年12月にグーグルが発表した「Willow」など、大手テック企業による開発競争が加速しています。マイクロソフトのMajorana 1は、エラー訂正に重点を置いた独自のアプローチで、この競争に新たな展開をもたらす可能性を秘めています。


筆者の視点:昨年末、Googleが画期的な量子コンピューターチップ「Willow」を発表して以来、量子コンピューターの実用化に対する関心が一段と高まっています。今回これに続き、マイクロソフトも新たな量子チップを発表しました。以前は量子コンピューターの実用化には数十年単位でかかると考えられていましたが、現在ではAIを活用した開発スピードの加速により、実現時期は3年から5年以内になるのではないかと予測されています。